世界中でドローンの国産化の動きが加速している。産業用ドローンの製造は現在、中国のDJIの独壇場となっている。ドローン・インダストリー・インサイツの調査によると、DJIが世界のシェアの76.1%(2021年3月時点)を占めるという。
こうした状況のなかで米国防省は20年1月、サイバーセキュリティーの観点から500台以上のDJI製ドローンを一時的に運用停止。さらに海外からのドローン購入を禁止。DJIは米国から中国企業への技術移転を制限するエンティティリストに登録された。
日本では国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が20年、国産ドローンの基盤を開発するプロジェクトを始動させた。
「国内に小型ドローンを製造し海外のメーカーとも伍して戦えるようなプレーヤーがいなかったので、それを育成するためにプロジェクトを始めました」(NEDO関係者)
1月27日に公募を開始し、4月27日に実施企業5社を発表した。プロジェクトは「委託事業」と「助成事業」に分かれ、前者は自律制御システム研究所(ACSL)、ヤマハ発動機、NTTドコモが、後者はACSL、ヤマハ発動機、ザクティ、先端力学シュミレーション研究所が選ばれた。
「委託事業」では、高い飛行性能や操作性、セキュリティーを実現するドローンの標準機体・設計・開発、および機体を制御する“心臓部”であるフライトコントローラーの標準基盤・設計を対象とし、「助成事業」では委託事業で研究・開発される標準仕様と合致するドローンの機体や主要部品の量産・供給体制・保守体制の構築を支援している。
さらに日本政府は安全保障の観点から外国製のドローンに依存することを問題視し、20年11月には官公庁が保有している計1000機のドローンを国産の機種に切り替える方針を固め、ACSL、ヤマハ発動機、NTTドコモなど5社連合に開発を委託した。しかも新規でドローンを調達する際には内閣官房に事前相談し、リスク評価を受けることを義務化し、製造過程で不正プログラムなどが製造過程で仕込まれる「サプライチェーンリスク」が疑われる機種は調達から除外される。
今年4月にNEDOが会見を開き、「安全安心なドローンの基盤技術開発」の成果を発表し、7月末までに最終的な開発を完了させてから11月末までにドローンの量産体制を確立し、21年度末までには政府に納入を果たしたいという。
では産業用ドローンの開発は今、どのような状況にあるのか。前回に引き続き一般社団法人日本UAS産業振興協議会(略称JUIDA:Japan UAS Industrial Development Association)理事長で東京大学未来ビジョン研究センター特任教授の鈴木真二氏に国産ドローン開発の最新事情について話を聞いた。
――「ジャパンドローン2021」でも紹介されたソニー以外にもドローン開発に参入している大手企業は、どのようなところがあるのでしょうか。
鈴木 ヤマハ発動機は農薬散布ヘリをやっていて、ドローンにも参入しています。デンソー、ヤマハ発動機、ヤンマー、そして今回参入したソニーあたりが有力な国産開発大手メーカーだということができます。もちろん多くのベンチャー企業が活躍しています。
――中国製のドローンの官公庁での使用が禁止され、昨年からドローンの国産化の動きが加速しています。
鈴木 そうですね。ドローンはインターネットでつないだ状態で保守点検、ソフトウェアのアップデートが行われ、ドローン内に記録されているフライトログなどが海外に流出してしまう恐れがあります。それを米国が最初に問題視するようになり、公的機関で中国製のドローンの使用を禁止しました。日本国内でもそれに刺激されて、セキュリティー機能をきちんとチェックしないと使用してはいけないということになりました。ただ中国製のドローンがダメだというわけではないのです。これをきっかけにセキュリティーのしっかりした国産のドローン開発に力を入れるようになりました。