三菱電機は7月3日、2日に開いた鉄道車両向け機器の検査不正に関する記者会見での杉山武史社長の発言を訂正した。
「株主総会(6月29日)の前日に取締役の皆さんに諮った」と、株主総会で今回の不正の報告を見送った判断について杉山社長は説明したが、7月3日、「総会の前日に取締役会は開かれておらず協議はしていない」と訂正した。「取締役に個別に説明した上で、社長ら執行役の判断で公表を控えたもの」とした。
取締役会開催は誰が決めているのか、三菱電機の実権は誰が握っているのか。企業統治に関する疑問が次々と湧いている。
7月2日の記者会見で杉山社長は「後任にふさわしい人材は三菱電機内に十分いる」と話し、「後任社長は社内から選びたい」との気持ちを強く滲ませたが、三菱電機の取締役会の正当性が問われる事態となっている。株主総会で不正の事実を隠蔽するという方針を、全取締役が容認していたのである。
調査委員会の結果がまとまり、公表される前に次の社長を決める段取りになっているが、次期社長を外部から招聘し、企業風土を根本的に改革するというショック療法、ハードランディングしか三菱電機の再生はないとの見方もある。
(文=編集部)
【続報】
経団連の十倉雅和会長は7月5日の定例記者会見で、三菱電機の棚山正樹会長から、鉄道車両向け機器の検査不正問題で9月に調査結果が出るまでの間、経団連の副会長としての活動を自粛したいとの申し出があり受け入れたことを明らかにした。
三菱電機の会長職や経団連副会長職などを含めた進退については「具体的に踏み込んだ発言はなかった」(十倉氏)。
JR東日本は7月5日、社外取締役を務めていた三菱電機の棚山正樹会長が同日付で辞任したと発表した。本人から辞任の申し出があったという。
棚山氏は2020年6月からJR東日本の社外取締役を務め、21年6月22日に開かれた定時株主総会で再任されたばかりだった。