理想的には経済のパイが拡大することだが、現時点においてもできることはある。限られたパイの奪い合いになっているのであれば、富の分配を明文化・ルール化するだけでも状況は大きく変わるはずだ。オリンピック関連の組織はその典型だが、透明性が低く内部でどのような議論をしているのか、外部からチェックが入りにくい。
組織の透明性を確保する仕組みを整えるだけでも、状況は大きく改善する。分配のルールが明文化されていれば、忖度したり密室で議論する必要もなく、各人が何かをわきまえる必要もない。対症療法的に見えるかもしれないが、目の前の問題を解決できなければ、根本的な解決など不可能である。
(文=加谷珪一/経済評論家)
●加谷珪一/経済評論家
1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。