米国経済はコロナ禍で惨憺たる状況なのに、なぜダウ平均株価がどんどん上がっているのか? これをバブルとみて、連れ高の日本株の暴落に警鐘を鳴らす向きもあります。しかし、米国では、新型コロナ用ワクチンを何十億回分も受注している大手製薬会社や、GAFAはじめ、大手ネット企業がコロナで業績を伸ばしています。これらの企業の業績向上が今後、ますます期待されるということで、正しい株価上昇が実現しているとみなす向きもあります。私もその解釈に賛成です。
コロナ禍を経て今後の企業価値上昇が確実視されるサービスでは、オンライン会議が一番わかりやすく、目立つと思います。そのNo.1 企業Zoom社が、Microsoft、Facebook、Googleらの追撃をかわせるかは見ものです。しかし、一見地味ながら、コロナ時代の企業情報システム、DXの中核に位置すべき本命と私が考えるのがSlack(スラック)です。
Slack は、Zoomと同じ年、2013年に産声を上げ、先ごろ、米Salesforce(セールスフォース・ドットコム)によって277億ドル(約2兆9000億円)で買収されることが発表されました。オンラインで会議やセミナー、授業ができるZoomはその効能が超わかりやすいですが、Slackがなぜ良いのか、使っていない人にはなかなか理解できないところがあります。そもそも何をするソフトであるか、略称の元をたどってみましょう。“Searchable Log of All Conversation and Knowledge” 「すべての会話と知識の検索可能なログ」といいます。
Slack社自身によれば、“デジタルワークプレイス”です。リアルの仕事空間をオンライン化し、デジタル化(≒DX)により情報交換、 情報共有のスピードを桁違いに高める効果を感じます。社内外のコミュニケーションを、いつでも目的、ニーズに応じて作れる“チャネル”を中心に行い、それに複数の相手とSNSのインスタント・メッセージ並みに気軽に、通信の秘密を保ちつつメッセージを交わせるDM(Direct Message)を併用します。DMは送ってしまったら修正できないEmailより優位です。必ず届くしSPAMメールも来ません。画像、音声、動画ほか、多彩な添付ファイルを、チャネルと同様、プレビュー付きで即共有できます。ほぼ挨拶文抜きにしてしまっても抵抗を感じさせない巧みな作りのおかげで、情報内容、仕事の中身に集中できます。
このスクリーンショットは、ある時点におけるメタデータ社の社内Slackの一断面です。辞書編集ツールを意味する#diceditというチャネルを開いています。そこのメンバーに対して、私が深夜に思い立って、ツールのうまい使い方を喋りながらデモして見せる様子を画面キャプチャーした2分間の動画を貼ったものが画面上半分にあります。思い立ってから動画を撮って簡単に編集し貼り終えるまでの所要時間は5分程度でした。
半日後に、別のメンバーから、さらに効率の良い一括編集画面とその使い方が紹介されています。相手が社長だろうが部長だろうが、成果物とその良しあし、説得力で勝負する実力主義なので、ごく当然の成り行きです。「いいね」マークがあまり付かないと、ちょっとがっくり(笑)。もっとわかりやすくできたかも、次回はもっと頑張ろう、と思うだけです。そんな企業文化を醸成してくれるようなユーザーインタフェースといえます。そのように使いこなしている、という説もありますが。