少し字が小さいですが、紫色の背景に白抜き文字で #times_*** とあるのは、***にメンバー苗字+αのローマ字を入れたチャネルです。個々人が今やっていること、考えていること、おもしろい自分のアイディアや、情報へのリンク、何かに躓いていることなど簡潔に、だだ洩れで書きつないでいきます。その人に少しでも仕事でかかわりのある人はそのチャネルのメンバーになっていて、概ね数分以内、長くて数時間、早ければ十数秒で、問題の原因を明らかにしたり解決のヒントや回避するアイディアなどを書き込みます。数十人に対して常時そのようにアドバイスしながら、自分自身の本業をいくつものプロジェクトにまたがってこなし、毎日何十もの問題解決し続けている猛者が何人もいます。そんな人は、役職、立場(所属)にかかわらずリーダー格としてリスペクトされ、評価されます。
数十人対数十人でも、数千通りの組み合わせが出てきます。しかし、コミュニケーション量の多寡や質の違いこそあれ、そんなコミュニケーションがこのデジタルワークプレイスで本当に実現してしまっているのです!
役員や管理職からみると、自身の仕事に専念するだけでなく、社内で刻々と誕生するアイディア、データ、知識(これはずばり“Knowledge”というオンラインシステムと連携して管理)、ソースコードやドキュメント(これは“git-lab”で管理し変更時にそのリンクがSlackに自動投稿される)など、リソースが一望できることのメリットを実感します。
時系列とスレッド、コメント・チェーンを眺められるのは、新聞のテレビ欄をはるかに高度にした感じです。クリックしたら中身を見られるように、デジタルデータの実物、コンテンツの実体や、外部リンクもすぐにたどれるので、ただの番組表ではなく、その先の実体とシームレスにつながっているわけです。
メタデータ社のようなソフトウェア開発企業の場合、メイン・プロダクトの設計、生産工程の大半がSlack上でリンクされ、コミュニケーションしながら進められます。デジタル工房、デジタル設計室、デジタル企画室を兼ねているといえるでしょう。
どんなに小さなことでも仕事、コラボがスムーズにいかないとか、もっと自動化できるとか誰かが考えつくと、そのやり方を書き込みし合って、よってたかって、新しいワークスタイルが出来上がり、そのルールが追加、修正されます。Slack自体に対しても、「こんな仕組みがあったら良いよね」、「あれ、前にも一度別の機会におそらく別目的で作ってた似た画面があったような、あった!」などと議論した上で、プラグインやAPIを呼び出すような仕組みで機能拡張することができます。
これらすべてを常時全部一望できるし、その変化も刻々と追うことができます。時間がたってしまったら、ワークスペース全体を横断検索してくれる検索機能に頼って、物事の経緯をおさらいしたり、時系列の記憶から「いつ頃にやってたあれこれ」を、チャネルやDMの画面をスクロールアップ/ダウンしてたどったりすることもあります。
以上の描写から、“デジタルワークプレイス”は、仮想オフィスと言い換えても良いことがわかります。その床面積はいかほどか? 私の仕事デスク上では、提携企業との共同チャネルや、顧客情報を保持する秘密チャネルの全部にかかわり、4Kモニタ4枚相当の画面面積のパネル6枚であちこちを開いて読み書きしています(事務机を2つ並べてピアノ椅子を左右に移動しながら)。画面面積がオフィスの床面積という側面はあるでしょう。しかし、瞬時にあちこち行ったり来たりできれば、同時に眺められる領域はさほど大きくなくても良いわけです。