――飲酒運転で死亡事故を起こし、悪質と判断されたなかには、懲役20年という判決も出ていますね。さらに、勤務先の処罰も控えています。ちなみに貴協会の飲酒運転に関する就業規則等は、どのようになっていますか。
西村 就業規則で飲酒運転という言葉を明確に示した規定はありませんが、飲酒運転は、懲戒事項の『重大な法令違反行為があった場合』として厳正に処分(懲戒)することとなります。
――やはり協会の性質上、厳格なのですね。貴協会では飲酒運転撲滅に積極的に取り組んでいらっしゃいますが、どんな啓発活動をされていらっしゃいますか。
西村 損保協会では、交通事故の削減により、被害者とともに加害者も減少する社会の形成に向けてさまざまな取り組みを推進しています。飲酒運転防止の取り組みもそのひとつです。企業の経営者、安全運転管理者などが飲酒運転防止の社員教育や研修を行う際の手引きとして『飲酒運転防止マニュアル』という小冊子を作成しています。このマニュアルでは、飲酒運転をした場合の企業等の罰則や、飲酒運転防止対策の各種提言、飲酒運転防止の啓発ツール・教育の紹介、さらには飲酒運転対策に困った時の相談先など、多岐にわたる情報を網羅しています。これまでに99.6万部を作成し、企業や自治体などを中心にご活用いただいています。有償(1部につき税込50円、郵送料実費)でのご提供となりますが、ホームページからダウンロード(無料)もできます。また、損保協会には全国に11の支部を置いていますが、地元県警と連携して飲酒運転防止に向けた独自の取り組みを展開している支部もあります。
――最後にこれだけは伝えたいということはありますか。
西村 交通事故、特に飲酒運転による事故は、被害者のみならず、その家族、さらには加害者とその家族など多くの関係者に大きな苦しみや悲しみをもたらし、それらは損害に対する補償や時間の経過によって癒えるものではありません。にもかかわらず、繰り返し悲惨な事故が起きています。一人ひとりがこうしたことを自覚して、運転するときには飲酒しない、させないことを実践していただきたいと思います。そうすれば、飲酒運転による事故の悲劇がなくなる日が、必ずやってくると信じています。
(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)