地元の有志たちと立ち上げたオンライン朝会。Zoomで多くの子どもたちとつながった。一方、4月から異動になった練馬区は、子どもたちへのPC普及率が14人に1台と都内でも遅れていた。それでも、恵まれない環境の中でも今できることをしたいと、着任校にある書画カメラや電子黒板などの材料を活用して、全教室でZoomが使えるようにした。
そうした行動によって、周りの先生たちの意識も代わり、Zoomを使ってできることを考えるようになったという。
「こうした取り組みが、第2波・第3波の備えにもなるし、GIGAスクール構想でハードが整備されたときにすぐに対応できるように、教員のマインドのインフラ整備をしておくことが大切だと思う」(二川先生)
日本全体でICT教育の普及率は5%という現状で、「できないことを嘆いたり責めたりせずに、自分にできることが何かにフォーカスすること」「自分ができないときには、誰かの手を借りることを恐れないこと」が大切だという。
最後の登壇者がこのイベントの主催者でもある、調布市立多摩川小学校の庄子先生。それまでZoomを使ったことはなかったが、休校措置が長引く中で「子どもたちのためになにもせずにはいられない」という思いから、4月頭から教員間で使い方の研修を始め、5月半ばからZoom朝の会を全学年で実施するようになった。
ここに至るまでに、校長に提案→教育委員会にプレゼン→実証検証→許可→全学年実施というプロセスがある。公教育でなにか新しいことを始めるためには、こうした段取りを踏むことは欠かせないのだろうが、これでもかなりスピード感があったという。その間には当然「デバイスのない家庭はどうする?」「Wi-fi環境のない家はどうする?」「学校のパソコンは使えるのか」という問題は起きた。しかし、「やってみないとわからない」と踏み切ったところ、6割参加すればいいかと思っていたところ、参加率95%という結果になった。やはり、完全を目指すのではなく、まずやってみること、やりながら考えることが大切だ。
やってよかったことは、「子どもたちの笑顔が見れたことと、子どもたちの良いところだけを見つけられること」(庄子先生)。朝の会をやってみて気づいたオンラインの可能性は、チャット機能やボディランゲージで全員が意思を表示できることで、これまで発言できなかった子どもも意思表示ができること。これによって、全員の子どものよいところを見つけられた。
さらに、他の教室のサポートに入ることで、普段はなかなかできない他の先生の授業をみることができたことだった。教育現場にオンラインを取り入れることで、教員のマインドセットが変わり、職員室の関係性を変えることにつながる。以前取材した渋谷区立西原小学校の手代木英明校長も同様のことを言っていたが、子どもたちだけでなく、教員自身にとっても大きなメリットがあると言っていいのだろう。