SNSに限らず、商品を購入したECサイトにも、商品の感想などを頻繁に書き込む人がたくさんいます。彼らの書いた口コミを頼りに商品、サービスを選ぶ人はさらに桁違いに多いでしょう。製造者、サービス提供者の公式見解と違って、欠点や実際の使い勝手が書いてあったりして、とても役に立つからです。
同様に、何かの使いこなし知識などのUGC(=ユーザが生成したコンテンツ)を囲い込んだ人力検索サイトも各国で提供され、ユーザーの役にたっています。書き込んだ人、UGCには通常報酬、対価は払われませんが、彼らも、自分の書いた量の何十倍、何百倍もの他人の書き込みを読んで恩恵を感じています。自分のコメントへの書き込みを、ファンからの感謝や賛辞と受け取り、それがますますたくさん書き込むインセンティブになっています。サイト運営業者は、多数のUGCから、AIを活用して消費者の好みの変化などを抽出し、製造者、サービス提供者にレポートを販売するなどで売り上げ、利益を上げます。
ヘルスケア・医療系のサイトもあれば、無料で弁護士が法律相談に応ずるかのようなサイトもあります。専門医が自分の専門知識を駆使して、一般人向けに1~2時間もかけて熱心に執筆することがあります。その直接の動機が、わずか100ポイント(=100円分のサイト内コンテンツ利用権)だったりします。もちろん、困っている人を助けたい、役に立ちたいという動機のほうが強いでしょう。
それにしても、一定規模以上に成長したUGC収集&提供サービスの支配力、独占力は強いものです。GAFAを4大世界最強企業と呼ぶ向きもあります。利用規約を熟読する人は滅多にいないので、提供したコンテンツ自体や、その利用行動の履歴が実質「販売」されていることに気付かないユーザーが多いでしょう。
GAFAに最も厳しく対抗しようとしているのは欧州です。2018年5月に EU一般データ保護規則GDPR (General Data Protection Regulation) を施行。GAFAらに人質にとられたかのような個人情報やプライバシーの扱いを厳しく規制し、違反には最高で世界収益1年分の4%と、グローバル企業では数百億円を超える制裁金で臨んでいます。実際、2019年7月には、顧客50万人の個人データを漏洩させたかどで、英ブリティッシュ・エアウェイズに1億8300万ポンド(約250億円:BAの世界収益1年分の1.5%)という巨額の金額の制裁金を科しました。
GDPRでは、IPアドレスやCookieのようなオンライン識別子も個人情報とみなされます。ですので、欧州からアクセスされるあらゆるウェブサービスが対象に含まれ得ます。これらを含めた個人情報について、利用目的、第三者提供の有無、保管期間、不審点などの問い合わせ窓口等をわかりやすくユーザーに提示し、事前に同意を得なければならなくなりました。GDPR施行直前に起きた「フェイスブックの8700万人分データの不正共有」がもし対象になっていれば、最高限度「世界収益1年分の4%」が適用された可能性が高い、と筆者は考えます。
米国では、GAFAを企業分割せよとの声が、2020年の大統領選候補からも聞かれるようになりました。自ら、彼らを規制し、分割すると宣言したのが民主党のエリザベス・ウォーレン候補です。アマゾンからは高級スーパーWhole FoodsとZapposを切り離し、GoogleからはDoubleClickとNestを、そしてFacebookからはInstagramとWhatsAppを切り離そうとまで具体的に提示しています。