同じような意図で、インディーズのアーティストや映画監督などが、楽曲のプロデュースや制作をプロにお願いするには予算が足りない。けれども生成AIを活用することで、それなりの楽曲を作れるようになる。そんな未来はもうすぐそこなのです。
ゲーム開発においても、生成AIの登場により、これまでよりも楽にゲームの開発を進めることができるようになります。大きいところでは、先にも紹介した各種CG作成、キャラクター同士の会話、プログラミングです。
Nintendo SwitchやPlayStation、パソコンといった、プラットフォームを使った本格的なゲームに限らず、スマホで手軽に遊べる無料のゲームなど、世の中には数多くのゲームがあります。
値段や規模などはそれぞれ異なりますが、どんなゲームを作るのかという企画に始まり、設計、開発、実装、テストを経てローンチ、という流れはさほど変わりません。
その中にあって設計・開発段階は、プログラミングやイラストレーションといった専門の技術を持つ、クリエイターが必要不可欠なフェーズです。ここを、生成AIが担ってくれるようになります。
たとえば、キャラクターのデザインや設計・開発です。クリエイターがイメージしたキャラクターの雰囲気をテキスト、あるいはラフ画像で入力し、補足を加える。そしてチャットを繰り返すことで、望むキャラクターに短期間で近づいていくからです。
背景、武器などのアイテムも同様です。とくに、昨今のオンラインゲームで人気の高いフォートナイトなどのRPGは、多くのキャラクターやシーンが登場します。中には、キャラクターでありながらもユーザーが操る主人公と、とくに会話をしない、あるいは誰も操らない背景的なキャラクターも少なくありません。NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター。以下、NPC)です。
ただ、このNPCもゲームの中では、言ってみれば映画におけるエキストラ的な存在です。つまり、しっかりとした動きが求められる一方で、ゲーム制作に限らず予算は限られていますから、どこまで作り込むか、との問題がありました。
この問題を生成AIが解決支援します。言葉や相手のリアクションに対して、適切な動きや会話を行うことが、できるからです。
実際、2023年の3月にサンフランシスコで行われた、ゲーム開発者向けのイベント「ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス」では、紹介したような取り組みが話題となっていました。
プログラミングにおいても同様です。プログラミングが好きな方には怒られるかもしれませんが、ゲームに限らず、プログラミングはあくまで目標を達成するための手段です。
そのため開発者が実現したいゲームの世界観などを伝えれば、あとは生成AIが自動でプログラミングの提案をしてくれる。実際、ソフトウェア開発のメジャーなプラットフォームGitHubなどに、コードが無数に公開されています。
そしてすでに、プログラミングを行わずにアプリを開発する動きは、以前からあります。フレームワークや専用のツールなどもたくさん提供されています。
つまり、ゲーム本来の楽しさ、魅力である、根本のアイデア出しの良し悪しやセンスのある人が、よりゲーム開発に注力できる。もちろん、大きなゲーム会社であればこのような取り組み、作業分担は当然行っているでしょうが、これから世の中に出ていく個人や若いクリエイターに、よりチャンスが到来する未来になると、私は考えています。
さらには、最初の企画・アイデア出しの部分まで、生成AIが担ってくれるような未来も考えられます。
実際、デンマークのコペンハーゲンIT大学研究チームは、『スーパーマリオブラザーズ』のステージを自動生成する研究開発(*1)に取り組み、「MarioGPT」なる生成AIと、実際に生成したステージを公開しています。