ハリウッド映画でも、以前からCGを使った作品は増える傾向にありますから、今後背景のCGがAIにより生成される流れは、一般的になるでしょう。
イメージとしては、生成AIがいくつかのパターンの背景CGを生成する。従来の伝統的なタッチから、最近の流行を反映したようなタッチを、といった具合です。監督や担当者はパターンをそれぞれ確認し、最適なCGを決定する。このような活用方法です。
生成AIを使えば、この世を去ってしまった著名人・有名な芸能人や実業家に、ネット上で新しい作品やアイデアのきっかけを作ってもらうことも可能です。たとえば、稀代の経営者である稲盛和夫氏。
稲盛氏は生前、盛和塾という経営塾を開き、経営の術や生き方のヒントを伝えていました。しかし、現在は解散しています。
ただ稲盛氏は、生前に著書も含め、数多くの有益な言葉やコンテンツを残しています。これらのデータを生成AIに学習させることで、稲盛氏だったらこういったアドバイスをしてくれる。そのような会話、サービスの実現が可能だからです。
実際、近しいコンテンツがすでにあります。「稲盛和夫bot」というTwitterのサービスです。こちらのアカウントは、稲盛氏の名言を定期的につぶやいています。ただ、これはあくまでこれまでのデータを識別している、パターン認識AIのレベルです。ここに、生成AIを加えるのです。
生成AIはテキストだけでなく、画像や音声の生成もできますから、リアルなアバターを生成し、まるで本人が話しているようなサービスに成長させることも可能です。
同様の技術を使えば、亡くなってしまった俳優をスクリーンに復活させることもできる。生前の画像や音声を生成AIに学習させるのです。実際、取り組み事例もいくつか見られます。
2019年のNHKの紅白歌合戦では、AIにより復活した美空ひばりさんが登場しました。ユーミンこと松任谷由実さんは、自身の50年前の歌声をAIにより生成し、ご本人とコラボレーションしています。
ユニークなところでは、イーロン・マスク氏とスティーブ・ジョブズ氏の対談を、生成AIが実現させた取り組みも見られます。バーチャルで再現された両者が、iPhoneやAIについて対談している様子がTwitterで公開されています。
正直、CGの2人はあまり似ておらず、動きもスムーズでもありません。
しかし、エンターテインメントとしては許容範囲でもあり、この先コンピューターリソースが充実していけば、まるで本物の2人が討論しているようなシーンが見られるようになるでしょう。
では、このような複合的な生成AIの技術や取り組みが進むと、未来はどうなるのでしょうか?
現在多くのサービスで使われているパターン認識型のチャットボットは、より正確になるでしょう。ホテルの受付などでも、最近はロボットによる応対が珍しくなくなりましたが、人と比べると機械的であることは否めません。
それが、リアルの応対に限りなく近づいていきます。さらに言えば、各人のアバターもこれまでのようなキャラクター的なものから、リアルなCGへと進化していくでしょう。これは、漫画『ドラえもん』に登場するコピーロボットのような存在、世界観と近しいものです。
たとえば、話者が話し続けるような講演では、十分に社会実装可能だと私は思っています。ホログラムも活用し、服装やメイクも思いのままに生成できますから、講演で全国を飛び回っている方などは、負担が減ることになります。
逆に、より多くの講演に応じることができるようになる。そして本人は、リアルのコミュニケーションが必要な場にだけ、登場すればいい。効率的な時間の使い方が実現するのです。