さまざまな企業で「1on1」の導入が進むなか、実際にやってみると「何をどう話せばいいのかわからない」「質問の仕方や内容によってはハラスメントになるのでは?」と戸惑う管理職や上司も多く、導入しても形だけのものになりがちでした。
そこで私が推奨しているのが、メンタリングの手法を活用したキャリア支援型の「1on1」です。「クライアントの中にすべての答えがあり、コーチは助言をしない・ロールモデルである必要は無い」というコーチングと違い、メンタリングでは、上司(先輩)がロール(パーツ)モデルとして伴走しつつ、必要に応じて助言や人生経験のシェアも行います。助言により新しい視点を獲得でき、知識も増えるため部下(後輩)の成長が早く、選択の幅が広がりやすい傾向にあります。
指示や命令をしたり、評価対象として相手と話すのではなく、経験豊かな上司(先輩)が「メンター」となり、次世代に対してキャリアの対話をし、必要に応じて助言をすることで成長をサポートする。これにより、部下(後輩)は安心感を抱きながら、自分のキャリアに対して前向きに展望を抱くことができるようになります。
メンタリングスキルは、相手と深く信頼を築くための「信頼関係構築」、いきなり何かを押し付けるのではなく相手の話に耳を傾け、相手が話しているその奥にある価値観や願いを掘り下げる「傾聴」、「深堀」、そのうえで、人生の先輩として助言したり経験談を共有する「アドバイス」、最後に、話を締めて行動や変化につなげていく「クロージング」で構成されています。
今回は、苦手な人が多い「クロージング」のテクニックを、具体的なケーススタディで、ポイントを絞ってご紹介しましょう。
上司A さん(メンター)は、部下Bさん(メンティ)と1on1の機会をつくり、仕事の進め方や人との接し方など経験を交えながらアドバイスしました。緊張しながらも話を進め、ようやくクロージングという段になりました。
クロージングのテクニックでは、①相手の話の始まり、途中、終盤のトピックを端的にまとめる ②そのうえで「話してみてどうでしたか?」と話を戻す……といった流れで進めていきます。
しかしAさんは、それまでの話の流れをなかなか思い出せず、頭が真っ白になってしまいました。
そこで、クロージングの理想的なテクニック(詳しくは後述)ではないですが、なんとかBさんに「この人と話せてよかった」と思ってもらいたいと考えています。
◆「まだ話したいことはたくさんあるんだけれど、終了10分前になったので、そろそろまとめに入りますね。今日は、話してみていかがでしたか? どんなことに気づきましたか?」 ⇦本来はこちらから話を整理したうえで感想を聞くべき。しかし、うまく整理しきれないので、裏技として、まずは先に感想を聞いてしまう