「失敗するビジネス」に共通する残念な3大典型例

「SDGs」「社会課題」をビジネスチャンスと捉える(写真:Sakosshu Taro/PIXTA)
最近ビジネスでよく聞く「SDGs」という言葉。「無償の奉仕」や「CSR的な社会貢献」という印象を抱く人も少なくないでしょうが、中には「社会課題」を「ビジネスで解決」し、本質的な意味で「持続可能」な事業を展開しているスタートアップも存在しています。
ビジネスの成長と、社会課題解決の両方を実現させている企業と起業家に共通する「成功法則」とは? 本稿では深井宣光氏の著書『SDGsビジネスモデル図鑑 社会課題はビジネスチャンス』より一部抜粋・再構成してお届けします。
 

ビジネスがうまくいかない「アイデア追求思考」

誰もが成功を目指してビジネスを始めるなか、思い描いていた理想に到達できず志半ばで事業をたたむ起業家が後を絶ちません。

中小企業庁によると、2022年の全倒産件数は6428件。1日当たり約18社もの企業が倒産しています。そして、倒産理由の第1位は「販売不振」で4525件。続いて第2位が、経営悪化を改善できずに倒産してしまう「既往のしわよせ」(757件)となっており、その他の理由と比較しても「販売不振」は突出しています。また過去6年にわたり企業が倒産する理由の第1位は、そもそも売り上げが立たない「販売不振」であることからも、いかに「売れない」ことが致命的な問題であるかがわかります。

なぜうまくいかないのか? 次のような、さまざまな問題が彼らの成功を阻んでいます。

集客
→できない
→できても売れない
価格
→安くないと売れない
→安くても売れない
資金
→足りない
商品/サービス
→良さが伝わらない
→リピートされない
販売
→うまくいっていないのはわかっているが改善できない

では、そもそもなぜこれらのような問題を抱えてしまうのでしょうか。その原因は「アイデア追求思考」にあります。

アイデア追求思考の「アイデア追求型」は、

・新しい仕組み
・凄い技術
・流行りのトレンド
・上手くいくノウハウ
・これから来るトレンド
・まだ誰も扱っていない商品
・イケてるビジネスモデル
・画期的なサービス

といったあらゆる情報、まだ誰も知らない(と思い込んでいる)情報を収集して、ビジネスがうまくいくアイデアばかりを追い求めてしまいます。

なぜなら、成功者が成功しているのは、きっと自分たちがまだ知らないアイデアのおかげであり、新しいアイデアや誰もやっていないアイデアさえあればうまくいくと信じ込んでしまっているからです。

スタートアップと「需要」「新規性」

このように、アイデア追求型の起点は、いつも「アイデア」です。

そして、社会のニーズや欲求よりも、「このビジネスモデルなら!」「この仕組みなら!」と思いついたアイデアや、発見した(と思い込んでいる)アイデアがうまくいくことを証明したいという感情が強い傾向にあります。その結果、いくらビジネスに情熱や意欲があっても、アイデア追求型は需要と供給のバランスを冷静に見られなくなっていたり、無視したりしてしまいます。そして、そのままアイデア優先でビジネスを始めてしまうので、苦境に立たされています。

アメリカの調査・分析会社CB Insightsやその他複数の調査でも「スタートアップの失敗理由」の第1位は「市場に需要がなかった」となっており、いかに多くのビジネスが需要をおろそかにした結果、失敗に終わっているかがわかります。

このように、需要と供給のバランスを無視して苦しむ、典型的な市場参入パターンが次の3つです。

①「需要あり、新規性なし」

まずは、①「需要あり、新規性なし」です。これは例えば、あなたがこれからコンビニビジネスに参入するようなパターン。大手競合がいる市場に分け入り、店舗数を増やしてビジネスを拡大できるほどの需要は市場にありそうでしょうか。