街の至る所にコンビニがあふれ、コンビニの向かいにはまた別のコンビニ。ちょっと歩いたら、また別のコンビニ。買い物には便利だけれど、数が多すぎる……そんなことを思ったことがある方も多いでしょう。日本国内のコンビニ数はすでに飽和状態にあり、2017年に5万5千店舗に達して以降、2023年1月時点まで店舗数がほぼ増えることなく停滞しています。
そして、それだけではありません。年間売上高は、2015年に5万3千店舗に達した際に10兆円の大台に到達したものの、以降7年の長期にわたって停滞を続けています。コンビニは、私たちの生活インフラともいえるような需要があるビジネスです。しかし、このように十分に需要が満たされていて、すでに供給過剰ともいえる市場では、競合と奪い合いの過当競争をするしかありません。
②「需要過少」
次に、②「需要過少」です。これは、例えばデジタルカメラのように、かつては大きな需要があっても、現在は需要が大幅に縮小しているパターンです。スマートフォンの登場によって、デジタルカメラの需要は10年間で約90%も縮小。このような過少市場は商品・サービスに新規性があってもなくても、厳しい市場です。
③「需要なし、新規性あり」
最後に、③「需要なし、新規性あり」です。これは、Googleが2014年に一般向けに発売したスマートグラス「Google Glass」や、ユニクロのファーストリテイリングが2年を待たずに撤退した野菜事業「SKIP」のパターンです。
「Google Glass」は発売当時、近未来的で斬新なウェアラブルデバイスに世界の注目が集まりました。しかし、プライバシーの問題や高価格であることなど、消費者が求めるものとのズレから伸び悩み、日本に上陸することなく2015年に販売終了となりました。
「SKIP」は2002年11月に事業を開始。「ユニクロの野菜」としてこちらもその新規性から注目を集めました。しかし、ユニクロの仕組みを使って安くていい野菜を届ければうまくいくと考えられていた「SKIP」は、利用者が求めるものとサービスのズレによって、販売開始から2年に満たない2004年4月、24億円の特別損失を出して撤退しています。(参照:日経BP『世界「失敗」製品図鑑』/2021年10月)
そして、需要よりも、商品・サービスや仕組みのアイデアが優先された結果失敗に終わっている、Googleやユニクロのような大企業でもうまくいかないこの3つ目のパターンこそが、実は最もアイデア追求型の陥りがちなパターンなのです。
④アイデア追求型と対照的な「需要過剰、新規性あり」
しかし、その一方で、アイデア追求型とは対照的に、「需要」と「新規性」がある巨大な市場で成功しているのが、④「需要過剰、新規性あり」の場合。例としては、ワークマンのようなパターンです。
ワークマンは2018年、需要があるのに供給が満たされていなかった、4000億円規模の巨大な「空白市場」=「高機能・低価格なアウトドアウェア市場」を発見。参入に成功して急成長し、店舗数はユニクロを超え、47都道府県944店舗と増加しています(2022年3月時点)。
ワークマンが発見したこの巨大市場について、ソフトバンクの孫正義氏は「よく国内で4000億円の空白市場をみつけた」とコメント。ユニクロの柳井正氏は「『常々私は、その市場をやったらいいんじゃないか』と社内で言っていた。ところが『ワークマンにやられた』」とコメントしていたことを、ワークマン専務取締役土屋哲雄氏自身が話されています。(参照:ダイヤモンドオンライン/土屋哲雄『ワークマン大躍進の秘密は「しない経営」と「エクセル経営」』/2021年1月20日)