ウィークスはその言葉に鼓舞され、ケンタッキーの工場を改装すると、半年以内にアップルが希望するガラスを届けることに成功した。iPhoneとiPadに使用されるガラスは、現在でもコーニングが製造している(*1)。
このウィークスとの会話で、ジョブズはすべてのリーダーに求められる根源的な選択をした。それは「自分」か、それとも「あなた」かという選択であり、著者たちの世界観では、「恐怖」か、それとも「愛」かという選択だ。
ジョブズは、できないというウィークスを否定するのではなく、むしろヒーローのように扱った。不可能を可能にするヒーローだ。
著者たちの経験から言えば、これは思ったほど難しいことではない。多くのリーダーは、周りの人たちに対してすでにかなり献身的な状態にある。ただその献身を効果的に伝えていないだけだ。彼らのことは応援しているが、それを安全な自分の心の中に隠している。
しかし、リーダーがこうやって自分の人間らしさを表に出さないでいると、チームにとっていいことは何もない。「厳格」から「正義」への旅は、本当の自分を見せることでもある。そのための方法は数え切れないほどあるが、著者たちが気に入っている方法のいくつかを、紹介しよう。
人生で出会う人たちに、相手への献身を伝えるためにできることを10個紹介しよう。
すべて24時間以内に実施できる。
1. スマートフォンを下に置く
現代社会に生きる私たちは、つねにデバイスに注意力を奪われている。そんな状況で誰かに100%の注意を向ければ、それだけで明確な献身のサインになる。デバイスの本来の役割は、遠くの人とつながることであり、すぐ隣にいる人を遠ざけることではない。
2. インタビューの達人になる
周りの人たちの人生に興味を持つ。なぜ同僚はああいう決断をしたのだろう? 彼らはその過程で、何に驚き、何に喜び、何に失望したのだろう? 会話のきっかけがつかめなかったら、ラジオ番組の名司会者、テリー・グロスの決まり文句、「あなたについて話してください」(*2)を借りればいい。
3. 彼らの現実を体験する
メンバーたちが職場で何をしているのか気になるのは、厳格なリーダーにありがちな態度だ。さらに、「どうせたいしたことはしていない」という思い込みとセットになっている。勝手に判断するのをやめて、彼らの行動に興味を持って観察しよう。あるいは、相手の仕事にずっと同行する「ジョブシャドウイング」を行うという方法もある。彼らの時間の使い方に本当に問題があるのなら、正しい時間管理を指導すればいい。
4. 自分に何ができるか尋ねる
誰かの役に立ちたいときは、自分に何ができるか相手に尋ねてみよう。自分の仕事と相手の仕事をごっちゃにしてはいけない。ここでのあなたの目的は、相手の成功を助けることだ。そして、相手の成功を確実に助けるような行動が見つかるまで、この会話を終わりにしてはいけない。
5. 先回りして助ける
チームのメンバーの中から、どんな仕事を抱えているかよく知っている人を選び(あなた自身が与えた仕事であれば確実だ)、その人の負担を軽くしてあげる。相手が特に困っている仕事や、相手の長期の目標と関連のない仕事を取り除けば、「私はあなたを理解している」という明確なメッセージを送ることができる。
6. 食べ物を与える
相手が食べたいと思っているものをごちそうするのが望ましいが、サプライズでドーナツの差し入れを届けるのも効果的だ。食べ物を与えるのは、相手の存在や人間らしさをもっとも根源的なレベルで認めるということだ。お祝い、感謝、残業時の差し入れなど、口実はいろいろある。食べ物は相手への献身を伝える明確なメッセージになる。