リーダーは結果を出すことが求められる。ただ努力しただけでは評価されない。そしてリーダーであるあなたの仕事は、他者を成長させることだ。あなたのフィードバックに効果がない、あるいはむしろマイナスの効果しかないのであれば、あなたは自分の仕事をしていないということになる。
厳格なリーダーでいるのがいちばん心地いいと感じる人もいる。もしあなたがそうなら、そうなるにはそれなりの理由があると仮定しよう。
相手に求める基準は高く、献身は最小限というタイプのリーダーは、短期的にはチームの生産性を上げるかもしれない(たとえば、足を引っぱっているメンバーを槍玉にあげる)。
しかし、そんなリーダーに長居されると、たいていのチームはマイナスの影響を受ける。厳格なリーダーでいることはあなたの選択であり、たいていは支配と安心を求める気持ちからその態度を選んでいる。
厳格であれば、支配と安心は手に入る(少なくとも表面的には)。しかし利点はそれくらいしかないだろう。周りの人はあなたの命令に従うが、命令以上のことをしようとはしない。彼らの目的は叱責や罰を避けることであり、そのために必要最低限の仕事をするだけだ。
厳格なリーダーの下で何か新しいことをしたり、与えられた職務を超えたことをしたりするのはリスクが大きすぎる。たとえ期待を上回る結果を出しても、期待と違うことをすれば罰を受けるからだ。
ここまで読んで、「それではスティーブ・ジョブズはどうなんだ?」と思った人もいるかもしれない。ジョブズはときにかなり厳格なリーダーになり、傲慢、高圧的、短気といった態度でも知られている。そんな彼が、20世紀でもっとも持続的な革新性を実現した企業を生み出したのだ。
しかし著者たちは、ジョブズは厳格だから成功したとは考えていない。ジョブズがもっとも力を発揮するのは、高い基準と、チームの能力への絶対的な献身を組み合わせたときだ。チームはジョブズにエンパワーされ、その結果として数々の超人的なタスクを達成してきた。
ジョブズはチームを信頼し、そしてチームは完全な忠誠でその信頼に応える。テック業界の人材獲得競争がもっとも激しくなっても、アップル社員はジョブズに忠実だった。初代マッキントッシュの開発チームで幹部を務めたデビ・コールマンの言葉は、ジョブズの部下たちの多くが感じていたことを代弁しているだろう。
「彼と一緒に仕事ができた自分は、世界一幸運な人間だと思っています」
著者たちがもっとも気に入っているジョブズの逸話を紹介しよう。ウォルター・アイザックソンによるジョブズの伝記で紹介されていた話だ。
初代iPhoneの開発中、ジョブズはぴったりのガラスを探していた。ジョブズの考えでは、コーニングという会社ならまさに理想通りのガラスを製造することができる。ジョブズは飛行機に乗り、コーニングCEOのウェンデル・ウィークスに会いに行った。
しかしウィークスは、それはできないと言う。少なくとも、ジョブズが提示する期限内には不可能だ。なぜならコーニングは、1960年代からガラスを製造していないからだ。するとジョブズは、会ったばかりのビジネス界の大物に向かって「心配はいらない」と答えた。「あなたならできる。ただやると決めればいいだけだ」。