そもそも「会社員として出世する」ためには、上司から評価されなければなりません。つまり、「上司からどう見られるか」が極めて重要です。
「社長にまで登り詰める」ほどなのですから、もともと「他人から悪く思われるかどうか」を人一倍、気にする性分なのかもしれません。
これとは対照的なのが「自分で起業した経営者」。テレビの取材は、全国の視聴者に自社商品の魅力を伝えられる絶好の機会です。
千載一遇のチャンスを逃さないよう、「自分で起業した経営者」はテレビカメラに食らいついてきます。笑顔の合間から、必死さが垣間見えるようです。そこには「緊張」の素振りなど微塵もありません。
なぜ、「自分で起業した経営者」はテレビカメラを前にしても、緊張しないのでしょうか。それは「悪く思われることへの恐れ」より、「自分たちの商品のよさを伝えたい気持ち」のほうが、はるかに強いから。テレビカメラに対し、まさに「攻めの発想」で向かっているのです。
過度に緊張してしまうときは、他人の視線を恐れるあまり「守りの発想」となっているのかもしれません。自分が「守りの発想」となっていることを自覚したうえで、気持ちを「攻めの発想」へと切り替えることが必要です。
とはいえ、気持ちを「攻めの発想」に切り替えるといっても、なかなか簡単にできることではありません。自分でもわかっているのだけれど、切り替えられない。そんなときに、私が昔から用いている方法があります。
それが「ドアスイッチ法」です。文字どおり、部屋の入り口にある「ドア」を、気持ちを切り替えるための「スイッチ」に仕立てる方法です。
この方法を「発見」したのは、私が就職活動をしていたときでした。私が就職活動をはじめた頃は、面接を受けても連戦連敗。緊張のあまり浮き足立ってしまい、思っていることを整理して話せなくなってしまうのです。
その日も面接を受けるために、ある会社を訪れました。私の名前が呼ばれ、入室を促されます。ドアノブを握りながら、ふと思ったのです。
「この扉の先は、演劇の舞台だ。扉を開けて部屋に入った瞬間から、自分自身を演じる役者として振る舞おう」
そう思った瞬間、肩の力が抜けました。その面接では、自然に自分自身を伝えることができたのです。
それ以来、私は緊張しそうな場面に遭遇するたびに、ドアノブを触れた瞬間、同じように自分自身に言い聞かせるようにしています。まさにドアノブが気持ちを切り替えるスイッチとして働くのです。
扉がなくて、ドアノブに触れられないときもあるでしょう。そんなときは、自分でスイッチを決めてしまえばよいのです。ドアがないとき、私は歩いていく先の床上に一本の線を想定します。そして「この線を越えたら、そこから先は舞台だ」と言い聞かせるようにしています。
本番直前に何か気持ちを切り替えるスイッチを設定することで、冷静さを取り戻して堂々とした振る舞いをすることができるのです。
厳しい結果を報告しなければならないときや、苦手な相手に説明しなければならないときは、どうしても、うつむきがちになってしまいます。うつむきがちになると、自信なさげに見えてしまって、よい印象を与えません。
私は昔から人と話すのが得意ではありませんでした。相手と目を合わせられずに、つい伏し目がちになってしまっています。かといって、真正面から相手と目線を合わせて話すのも、どうにも落ち着きません。
そういうときは目線を相手の喉元あたりに置くことをお勧めします。ネクタイをしている相手なら、ネクタイの結び目を見つめながら話すのです。こうすれば真正面から向き合いながらも、目線を合わせずに済みます。