――前回の著書(『ライフデザイン スタンフォード式 最高の人生設計』)を4年前に出されてから外部環境が大きく変わりました。人々が仕事に求めるものも変わったと思いますか。
エヴァンス:つい先日、50人のハイテク製品開発のリーダーたちと、まさにこの質問について話したところでした。新型コロナによるパンデミックなどを経て、なぜこれほどまでに多くの人が仕事を辞めることを決めたのだろうか、と。
ただし、これは新たな問題ではなく、「古い問題に対する新たな不寛容」だと考えます。かつては仕事と人生が交わることはありませんでしたが、パンデミックによって仕事と生活が一体化するようになって、人々は仕事にも「意味」を求めるようになったのです。首尾一貫した人生を送りたい、ということですね。
グーグルやアップル、ネットフリックスなど大手企業の幹部からも、この話をして欲しい、と依頼されました。傍から見れば非常に成功している人たちでさえ「物足りなさを感じている」と言うのです。充実感がない、と。自分の仕事が「意味があるもの」であることを望んでいるのです。そこで私は、仕事から得られるものを得る方法と、仕事から得られないものに失望しない方法について話をしました。
――人々は仕事に何を求めるようになったのでしょうか。
エヴァンス:先週、中米のビジネスリーダーたちと話す機会がありました。中米はアメリカより楽観的な文化と言うことができると思いますが、それでも多くの離職者が出ていると。
参加者の1人によると、「1年前はみんなお金のために転職していたが、今はそれだけでは十分ではない。従業員が今求めているのはよりよい労働文化なんです。もっと上司に話を聞いてもらって、自分のやっていることにもっと口を出してもらいたい、と思っているんです」。
この本では、人々がキャリアを築く上での動機づけとなる3つのもの、「自律性(Autonomy)」「関係性(Relatedness)」そして、「有能感(Competency)」に関する調査結果をいくつか紹介しています。
自律性とは自分のやっていることに対してある程度の力を持つこと。関係性は他の人と一緒に働き、チームの一員であること。そして、有能感とは自分がやっていることで能力を発揮することで、仕事においてはこの3つの欲求が満たされることが重要で、人々はまさにこれを求めるようになっているのではないでしょうか。