ネットにつなぐ前に1つだけ作業をしてみましょう。作業を完遂する必要はありません。ちょっと手をつけるだけです。
作業の見通しがついたら、2番目の行動としてメールチェックをしましょう。たったこれだけで、やるべきことに対する「めんどくさい」が消える体験ができます。
自分はめんどくさがりだ、という人の相談にのっていると、客観的に見ると矛盾している、不可解な行動をしていることがあります。
それは、両手に別の物を持つことです。
同時に複数の作業をしようとして、そのような状態になっているのですが、これは、「今どっちの作業をしようとしているのかわからない」と、脳を混乱させる命令です。
私たち生物の生存戦略は「省エネ」で、基本的には1つのタスクしかこなすことができません。ですから、何かを手に持っているときに、別の作業を思いついたとしても、両手に物を持たないようにしてみましょう。
なぜなら、両手に物を持つと、目にした刺激に注意が奪われて無駄なことをしてしまうからです。
ここでのポイントは、シングルタスクにする=仕事量を減らす ではない、ということです。むしろ、シングルタスクにすると、1日を終えたときの達成感は高まるはずです。
ここでまた質問です。
「効率よい仕事とは、たくさんの仕事ができることだ」と考えてはいませんか?
「効率よい仕事=仕事量が多い」ではなく、「効率よい仕事=重要な仕事を短時間で終える」と、考えを再セットしてみましょう。
仕事でも日常の家事でも、思いついたことは「緊急度の高い」仕事だと感じます。緊急度の高い仕事をこなしていると、交感神経の活動が高まり視野が狭くなるので、「そもそもこの作業は必要なのか?」という自問ができなくなってしまいます。
本当は不要かもしれない作業の量をかせごうとするので、「めんどくさい」の対象になる仕事も増えていきます。
面談ではよく、作業の「重要度」と「遂行度」と「満足度」を分けて点数をつけてもらいます。これは、作業療法士が使用するカナダ作業遂行測定という方法で、重要度の高い仕事を満足いくようにできたら、生活を豊かにすることができるという考えのもと、その人が「豊かな生活だな」と思える作業とそのやり方を見つけていくときに使います。
これによって、緊急度は高いけど重要度が低い仕事をやめることができます。
例えば、資料にイラストを入れようと思って、ネットで画像検索をして長時間を費やしてしまうという場面。「今イラストを選ぶのは重要じゃない」と気づければ、その作業をやめて本当に重要なことにエネルギーを配分することができます。
両手に物を持つことをやめれば、緊急度の高い作業がいっぱいあるという「錯覚」に陥るのを避けられます。両手に物を持ちそうになったら、「今これ重要?」と問いかけてみましょう。
物を両手で持っている人を見たら、「大事そうに持っているな」と感じるでしょう。それは、自分の脳内で丁寧に物を扱ったときの動作の記憶と照合されたということです。両手を使って丁寧に物を扱ったときは、高い完成度で作業できたのではないでしょうか。
完成度が高ければ、やり直しが少なくなるので、それだけめんどくさい作業を減らすことができます。
気持ちが前のめりになっているときに、物を両手で持ってみると、気持ちがスローダウンするのを感じられるかもしれません。
丁寧な作業のフォームという脳に通じる命令が出されたことで、高い精度で作業するモードが発動されて、交感神経は抑制され適度にリラックスした状態がつくられたということです。
私たちの体は、この適度にリラックスした状態が最もパフォーマンスが高まるのです。