めんどくさい気持ちを消すには、できるだけめんどくさくない時間帯に作業するのがコツです。めんどくさい作業を目にしたときパッと手を出せる反応速度は、時間帯によって異なります。
画面にシグナルが出て、被検者にできるだけ速く反応するように指示した実験で、10時、12時、14時、16時と同じテストを行うと、10時の反応速度が最も速く、時間が経過するほど遅くなっていき、16時の時点では10時に比べて約5倍遅くなっていました。
このように、私たちの脳は、目覚めてすぐが一番行動力が高く、夜眠る前が一番「めんどくさい」と感じるリズムを持っています。
ところで、企業での働き方改革で、この脳のリズムをもとに業務を改善していただくことがあるのですが、最もインパクトが大きいと言われることがあります。
それは「朝イチのメールチェックをやめること」です。
朝イチは、仕事時間の中で最も反応速度が速く、判断力にも優れている時間帯です。その時間帯を、他人の状況をチェックするメールチェックに費やしてしまうのはもったいないです。
脳は、行動をパターン化することで省エネを図るので、「出勤して自分のデスクに行き、荷物を置いてパソコンの電源をつけ、メールソフトを開く」、ここまでがほぼ自動化されている人が多いです。この自動的な行動は、じつは生産性向上のためには非効率です。そこで、自動化を一旦解除し、別の行動を脳に組み込みましょう。
私はこれまで、多くの企業の働き方改革で、朝イチのメールチェックをやめて、まず自分がその日に最もやりたいことを取り組むことを推奨してきました。この話をすると、ほとんどの企業で同じ反応をされます。
「それはできない。緊急の連絡がきているかもしれないから」という反応です。
そこで、本当に困るのかどうかを実験的にやってみますと、これまたほぼ同じ反応をされます。
「別に困らなかった。確かにはかどるような気がする」という反応です。
脳の自動化は、無意識で行われています。行動の選択でさえも、無意識で行われています。そして私たちは、その自動的な行動に対して理由を後付けしています。これは、チョイスブラインドネスという有名な実験で立証されています。
被検者に2人の顔写真を見せて、どちらが好みの顔かを選んでもらいます。少し別の話をした後、選んだ顔写真とは違うほうの顔写真を見せて「どこが好みなのですか?」と聞くと、被検者は、選んでいない顔写真であることに気づかず、質問に答えるのです。
目覚めた後や出勤後、帰宅後や入浴後など、場面が変わるときに最初に行うことは、ほぼ自動化されていて、その理由は後付けされています。この仕組みに逆らって、新たな行動に書き換えて自動化させましょう。
後ほど詳しくお話ししますが、スマホやパソコンでインターネットに接続すると、画面に表示される情報に脳の記憶容量が奪われるので、自分の行動を客観的に書き換えるワーキングメモリが使えなくなります。