仕事も勉強も共通「伸びる人、伸びない人」5つの差

その原点にあるのは、質問です。なぜこのお客さんは攻略できないのか、この商品が売れないのはなぜか、といった「なぜ」ですね。

西岡:特に、失敗したときは「なぜ」が重要でしょうね。

嶋田:もちろんそうですが、成功したときも「なぜ」は必要です。なぜこれはうまくいったのか。意外と人間は、成功すると浮かれて分析しないのです。

嶋田:なぜ成功したのか。なぜお客さんが喜んだのか。それがわかれば、横展開していくことができます。

『東大独学』でも書かれていましたが、そういう教訓を「言語化」することも大事ですね。多くの人はおざなりにしていますが、ちょっと突き詰めて考えて、メモしておくだけでも、組織全体の生産性は変わってきます。

知識欲と「知識の構造」への理解

3:「知らない」ことに対する危機意識

西岡:僕が怖いと感じるのは、なにかを知らない状態でも、知らない世界の中で満足している場合が多いということです。

ちょっと知れば、「こんな知らない世界があったのか」となりますが、「知らなくても困っていないから、知らないままでいい」という人もいます。それは学びに対するモチベーションの差であり、ここにも「伸びる人と伸びない人の差」があるように思います。

嶋田:東大生の大きな特徴は、知識欲が旺盛なところですね。新しいことを知りたがりますし、知らないことをそのままにしません。

嶋田 毅(しまだ つよし)/グロービス経営大学院教授、グロービス出版局長。東京大学理学部卒業、同大学院理学系大学院修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。ベストセラーである「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。著書に『MBA100の基本』『KPI大全』(いずれも東洋経済新報社)など多数。グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題などの講師を務めるほか、各所で講演、新聞などへの寄稿も行っている(撮影:尾形文繁)

私が東大生時代、仲間とカフカの『変身』について話したことがありました。そのとき、1人だけ読んでいなかった人がいて、「『変身』も読んでないの?」という冷たい視線を浴びていたのですが、後日読んできたと言っていました。

知識に対する、よい意味での同調圧力があるところは、東大のいいところかもしれません。

西岡環境要因は、自分で変えることもできると思います。たとえば、同じ会社の中にずっといれば、勉強しなくていいと思うかもしれませんが、一歩外の世界へ出てみると、「もっと知らなきゃいけないことがあるな」と思うかもしれません。

4:「つながり」に目を向ける

嶋田物事のつながりを理解することも大事ですね。例えば、読書は、目的なく読んでいたとしても、積み重ねるうちに「あのときに読んだ話が、ここにつながるのか」ということがわかります。すると、頭の中で立体的に構図が見えますね

嶋田:多くの人の勉強は、点と点で終わっていることが多いのですが、それが線でつながる感覚が見えるようになると、物事はすごく頭に入りやすくなります。

「分野内のつながり」と「分野横断のつながり」

西岡点で追っているか、線で追っているかの違いは、伸びる人、伸びない人の大きな差ですね。

西岡 壱誠(にしおか いっせい)/現役東大生・ドラゴン桜2編集担当。1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「独学術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大独学』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計40万部のベストセラーになった(撮影:尾形文繁)