やはり「サッカー型組織」が会社も強い!2大理由

また、サッカーワールドカップでは、多くの場合、開催国が強さを発揮します。地元ブラジル代表は過去に5回も優勝を飾っていましたが、そのときのブラジル大会では、準決勝でブラジルがドイツに1対7で惨敗を喫します。それは「ミネイロンの惨劇」と呼ばれたほどで、ドイツは決勝でアルゼンチンを破り、優勝します。

この年のはじめにJリーグのチェアマンに就任した村井満さんは、なぜドイツがこのような強さを発揮したのか調査しました。

その結果、ドイツのプロサッカーリーグでは、各リーグの所属チームに対して、「選手育成力の評価」を実施していることがわかりました。

その評価の点数に応じて、協会から付与される育成支援金の額が変わるため、各チームとも「選手の育成」に力を入れていたのです。

そこで、村井さんは「評価システム」を提供するベルギーの企業を日本に招き、Jリーグの各チームを評価してもらいました。そこで、「驚きの結果」が出ました。

結果は、Jリーグの各チームに、総じて低い評価が下されたのです。なかでもとくに低かったのが、選手の「オーナーシップ」の項目でした。

勝ったドイツは「チームとしての独学力」が強かった

サッカーでは、フォワード、ミッドフィールダー、ディフェンダー、キーパーと、1人ひとりの基本的な役割は決まってはいますが、いざ試合が始まると、ハーフタイムまで監督やコーチの「細かい指示」を得られません

そのため、その場その場で「個人の判断」が求められ、展開次第で役割をいくらでも柔軟に変化させていくことが求められます。本来は守りのディフェンダーが攻撃に加わり、シュートしてもかまわないのです。

役割を柔軟に変化させるため、選手自身が状況変化を観察し、判断し、仲間に伝達し、チームとして戦術を「主体的に」変化させ、行動変容していく。それで成果が出なければ、また「観察→判断→伝達→行動変容」と、短いときは分単位で繰り返す。

ビジネス用語でいえば、「高速回転のジョブデザイン行動」です。それを選手1人ひとり、そしてチームが実践するわけです。

ドイツのチームが選手の「オーナーシップ」を重視したのは、「選手1人ひとりのジョブデザイン行動」と「チームとしての自律的戦術形成能力」を高めるためでした。

また、オーナーシップの中には「練習の主体性」の項目があります。練習のメニューのうち、監督やコーチから指示されたもののほかに、次週に戦うチームとの対戦を想定した練習など、選手たちが自発的に行うメニューの割合を評価します。

いわば「チームとしての独学力」で、これが日本のチームは、残念ながらきわめて弱い。日本では、「練習のメニューは監督やコーチが決めるものであり、指示どおり練習する」という発想が染みついていたのです。

日本代表選手は、この「オーナーシップ」が低かったため、対コートジボワール戦での予想外の事態に対して、十分な行動変容ができなかった。他方、ドイツ代表は選手の「オーナーシップ」が高かったので、強豪ブラジルを破り、優勝の栄冠を手にすることができた。

村井さんは、この決定的な違いに衝撃を受けたといいます。

企業の組織モデルも「野球型」から「サッカー型」への転換が求められています

(出所:高橋俊介著『キャリアをつくる独学力』より)

野球ではチャンスのとき、次の球を見送るか、バントをするか、ヒットエンドランを仕掛けるか、基本的には1球1球、「監督の指示」を仰ぎます

監督が試合の途中でタイムをとって、指示することもできます。また、「ジョブ型」のように、それぞれのポジションごとに「役割が明確に定義」されています

これに対し、サッカーでは、ディフェンダーとしてのジョブを担っていても、状況次第では攻め上がって攻撃に参加することも、瞬時に自分の判断で行わなければなりません。自分の基本的な役割を越えて、その場その場で、自分で考え行動し、チームに貢献する