FIFAワールドカップ・カタール大会がいよいよ開幕しました。
ご存じのように、サッカーは11人が「それぞれの役割」を担いながら、一丸となってゴールを目指すスポーツです。いざ試合が始まれば、個人の臨機応変な判断によるプレーで展開していきます。
対して、野球は試合中に監督がサインを送り、選手は「指示どおりのプレー」をするなど、サッカーに比べて「監督の指示」がゲーム展開に大きく影響するスポーツだといえるでしょう。
この野球とよく似ているのが、「会社員を襲う「あまりに大きな2つの変化」の本質」でも紹介した、日本企業が長らく続けてきた人材育成、つまり社内での「タテ型OJT」です。
「上司・部下」「先輩・後輩」といった、上下の序列の差がきわめて重要な機能を持ち、「組織内タテ流動」で、つねに「上から下へ」という流れが生まれます。「『タテ型OJT』への過度な依存が、企業をいまや存続の危機に追いやっている」といってもいいでしょう。
今回は「サッカー型」「野球型」という「2つの異なる組織モデル」を軸に、「『サッカー型の組織』が仕事でも強く、優れた人材を育てる2大納得理由」として、今後の日本の「人材育成のあり方」「企業組織のあり方」を解説します。
まずは、日本の人材育成の転換点を象徴するエピソードを紹介しましょう。サッカー日本代表にまつわる話です。
2014年、FIFAワールドカップ・ブラジル大会でのグループリーグ初戦、対コートジボワール戦のことでした。
前半、本田圭佑のシュートが決まり、日本は1対0でリードします。ところが、後半に予想外のことが2つ起きます。
1つは、ディディエ・ドログバという選手の存在です。コートジボワールにはドログバという、イングランドのプレミアリーグで二度、得点王に輝いたこともある有名なストライカーがいました。
そのころのドログバは調子が悪かったため、日本代表は「ドログバは試合に出てこないだろう」と予測して戦術を組んでいたところ、後半17分、ドログバが選手交代でピッチに登場したのです。
もう1つは、突然、予想外の激しい雨が降りはじめたことでした。
選手たちは、この状況に対応した戦術を立て直すことができず、立て続けに2点を奪われ、2対1で逆転負けしてしまいました。これが尾を引き、その後、1勝もできず予選リーグを敗退してしまいました。