世の中には膨大な「聞く技術」の本があります。それらを買いあさり、読みこんでみました。
その結果わかったのですが、それらの本が主張しているのは、「余計なことを言わずに適切な質問をしよう」に尽きます。
そのとおり。
日々カウンセリングの仕事をしている実感と、完全に一致します。
誰かの話を聞こうと思うなら、相手に合わせて、「余計」なことを言わずに「適切」な質問をしましょう。これが本質。
以上。
絶望的な結論だと思いませんか?
だって、「余計」と「適切」をどう判断すればいいのかがわからなくって、みんな困っているのですから。
日本刀職人に「どのくらいの力で鉄を叩けばいいですか?」と尋ねて「ちょうどいい感じでやるんだよ」と言われてしまうようなものです。
本質は残酷です。結局、「程度の問題」になってしまって、困っているときに助けになりません。
ですから、小手先の話をしましょう。
心理士仲間と話していて、「ああ、そういうのあるよね、俺もやってる」と意気投合できるような小手先の技術がいくつかあるので、それらを紹介してみます。
小手先のいいところは元気が出るところです。程度の問題と言われると「どうせ私には無理なんだ……」とやる気がなくなりますが、明日から使える小手先は「ちょっとやってみるか」と思えます。
所詮小手先ではあるのですが、されど小手先でもあります。誰かの話を聞くために、以下の小手先を使ってみる手はあるでしょう。
先に、ご紹介する12の小手先をお見せします。
さてさて、カウンセラーたちが普段使っているささやかな小手先たち、一体全体どんなものか?
【1 時間と場所を決めてもらおう】
と言いつつ、最初から本質的な話になってしまう気もするのですが、話を聞くために最も重要なのは設定です。
設定というのは、たとえば時間や場所のことです。
話をするための時間がどれくらいあるかによって、話す内容は変わってきます。基本的には、しょっちゅう会っていて、時間が長いほど、深い話をできます。
それから場所。みんながいる広間でしゃべるか、2人きりの密室でしゃべるか。基本的には密室のほうが深い話ができるけど、広間のほうが安全に話ができます。あとから、しゃべらなきゃよかったと思う話をしないで済むのが、広間のいいところです。
ですから、誰かの話をきちんと聞かなきゃいけなくなったら、どういう場所で、どれだけの時間、話をするのか、相手に選んでもらうといい。決定権を委ねましょう。
「どこで話そうか?」「どれくらいの時間あるといいかな?」と尋ねてみるのが小手先その1。相手がちょうどよい(程度問題!)設定を提案してくれるはずです。