中小企業「そうだ、DXしよう」大抵失敗する3大理由

自分たちの会社ではどのようなDXが可能なのか、そのために何から始めればいいのでしょうか(写真:metamorworks/PIXTA)
昨今、声高に叫ばれているDX。「デジタルトランスフォーメーション」を意味し、企業がAI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなビジネスモデルを創出させることを意味します。
しかし、高度な専門的知識を必要とするためDX人材は足りておらず、とくに資金力で大企業に劣る中小企業が採用することは難しくなっています。では、中小企業はいったい何をすればいいのでしょうか。
長尾一洋さんの新書『デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門』より一部抜粋・再構成してお届けします。

中小企業のDX失敗「あるある」

「うちでもDXを始めようと思う」

ある月曜日の朝礼で、社長が全社員に向けて宣言。早速、社内に「DX推進チーム」ができました。リーダーを担うのは、経理部で「エクセルの達人」と呼ばれるベテラン社員です。メンバー選びも一任されて、「若い人たちならデジタルに強いはず」と、若手社員を中心に3名を選定しました。

とはいえ、中小企業においては、通常業務を止めて新規プロジェクトに参加させる人的余裕はありません。全員が通常業務を兼任しながらのスタートです。

最初の壁は「ITに関する知識」。いくらエクセルの達人でも、デジタルネイティブ(物心ついたときからパソコンやインターネットが普及していた環境で育った世代)でも、「DXを会社経営にどう活かすのか?」という見識があるわけではありません。

自分たちの会社ではどのようなDXが可能なのか、そのために何から始めればいいのか。どうスタートすればいいのか見当もつきません。困った挙句、こんな声が上がります。

「社長! ITに詳しい人がいないと何も始まりません!」

こうなったとき、中小企業の経営者が思いつくことは3つあります。

1つ目は、社内で最もデジタルに強そうな社員に「独学でなんとか理解してくれ! お前だけが頼りなんだ!!」と丸投げするパターン。これは、人によっては眠っていたITに関する才能が目覚めてバリバリ活躍してくれるという、ごく少数の成功例はあるかもしれません。ですが、ほとんどの場合はキャパオーバーとなり、大切な社員をつぶしてしまうことになりかねません。

2つ目は、「じゃあ、ITに詳しい人材を募集しよう!」と、ハローワークや就職情報サイトに登録してみるパターン。残念ながら、ほとんど応募はないでしょう。もしあっても、面談してその人のITの力量を判断する知識がありません。相手の発言のレベルチェックもできないし、真偽の判断さえつきません。ミスマッチが起こる確率が高いでしょう。

3つ目は、「ええい、面倒だ! ITは外注してしまえ!」というパターン。確かに外注は1つの手段ではあります。だけど、「どこに?」「どんな人に?」「何を?」がそもそも見えていないので、頼み方といえば「全部お任せします」としか言いようがありません。

結果、社員には使いこなせないレベルのものや、使い勝手のよくないものが納品され、その上、高い報酬を請求されてしまう……といった事態に陥りがちです。

現場では、特に珍しくもないくらい、こんなことが起こっています。このような失敗に陥らないために、「デジタル人材がいなくても」「ローコストで」DXを進める方法を紹介します。

中小企業がデジタル人材を採用できない理由

どの企業においても、デジタル人材の確保が大きな課題となっています。大企業では、外部からの採用を進めると同時に、社内人材をリスキリング(再教育)しているところも多く見られます。また、高額の給与体系を新たに設けて、デジタル人材の募集を始めた企業もあります。