「小説の新人賞」に“根拠なきモテ設定”が多いワケ

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主要登場人物、特に主人公に関しては、「成長」ないし「進化」をとげるのが一般的だろう。のちに論ずるが、例外はサイコパスか天才的探偵役のどちらかしかない。そうした「成長」や「進化」にはキャラ的な変化が伴われなければ不自然である。

進化や成長でなく「退化」するのでも構わない。副主人公が前半までは魅力を放っていたのに、後半になると急にメッキが剥がれ、別の脇役に取って代わられることが時として見られるが、こうした「退化」も見逃せないリアリズムの発現なのである。

病気持ちというのもキャラクターのうちに入れておくべきだろう。ヤク中で神経病みのシャーロック・ホームズや、末期ガンのため余命半年の刑事といったパターンならよく見かけるが、ある病気を持っているために特定の人生観が生まれたケースや、定期的かつ頻繁に加療が必要なために行動が著しく制限されるといったケースには滅多にお目にかからない。これらは立派にキャラクターとしての機能も備えているだろう。