TfLでこのロープウェー「ロンドン・ケーブルカー」運営の責任者を担うジョシュ・クロンプトン氏は、イベント前に出した声明で「ピカチュウの足跡をたどり、ポケモンをテーマにしたサプライズをロンドン・ケーブルカーで体験してほしい。ロンドン・ケーブルカーは、ロンドンの象徴的なアトラクションであり、世界中のポケモンファンをお迎えすることを楽しみにしている」と期待感をにじませた。
実際にイベント期間中、ロープウェーの駅に行ってみると、順番待ちの列には明らかに「ポケモン目当て」のファミリーが何組も目についた。チケット売り場の列には海外からの観光客も多く含まれており、テムズ川対岸への交通機関としてではなく「往復して景色を楽しもう」という利用客が目立った。
「イベント後も2日間はポケモンステッカーを貼っておく」との情報を入手した筆者は、最終日に再び”搭乗”のためにノースグリニッジを訪れた。係員にポケモンイベント中の運行成果について尋ねると、「まだ感覚的な数値だが」と断ったうえで、こんな答えが返ってきた。
観光客はロンドンに戻ってきているものの、ロープウェーの利用はパッとしない。「このところの利用者数は1日当たり2000人がやっと、と厳しい」。ただ、ポケモンイベントがあった8月20~21日の週末は一気に1日当たり8000人~1万人まで増え、大いににぎわったという。
だが、コロナ禍以前の夏休みには、1日当たり2万人超という日も珍しくなかったという。ポケモンイベントの週末はとても混んでいるように見えたが、係員によれば「以前のにぎわいから思えば、現状はまだ半分」といい、「ものすごく混んでいた頃は、1つのゴンドラに定員最大の10人を押し込んでなんとか利用客をさばいていた」と語った。
筆者が訪れた日は、まだゴンドラにポケモンステッカーが貼ってある状態だったため、平日の午後にもかかわらず搭乗まで30分待ちで、明らかに「ポケモンゴンドラの撮影目当て」の利用者が多数訪れていた。しかし、一見混雑しているように見えたものの、家族やグループでそれぞれ1つのゴンドラを使えるくらいの状況で、筆者もゴンドラを1人で独占できた。
しばしの忙しさが戻ったロープウェー。だが、「ゴンドラのポケモンステッカーを剥がしたその後」が問題だ。係員は冴えない表情で、「当面はスポンサーなしの状態が続く。いったいこれはどうなるのだろう……」と話した。
コロナ禍の影響で3年ぶりのリアル開催となったポケモン・ワールド・チャンピオンシップスだが、大会最終日に「来年の開催場所はYOKOHAMA(横浜)」と発表され、「これでついにニッポンに行ける!」と会場は興奮のるつぼに陥った。やはり、”トレーナー”たちは「ポケモンのふるさと、日本へ行きたい」とあって、喜びの声があちこちから上がっていた。
PWCSの日本での開催は史上初となる。ポケモンの愛好者たちにとっての横浜は『ポケットモンスター 赤・緑』の舞台「カントー地方」の港町、「クチバシティ」のモデルと見られている街だ。ゲームの画面に出てくる舞台でリアルな大会が催されるとなれば、チャンピオンでなくても訪れてみたいと思うに違いない。
横浜といえば2021年4月、みなとみらい地区に都市型ロープウェー「YOKOHAMA AIR CABIN(ヨコハマエアキャビン)」が開業。桜木町駅前と、赤レンガ倉庫や横浜ワールドポーターズなどがある運河パーク駅とを結んでいる。こちらもロンドンと同じく小型のゴンドラが多数循環するタイプで、動いている姿はよく似ている。ロンドンでのポケモンロープウェーが大好評だったことを見ると、横浜でもそのにぎわいの再現を期待したくなるところだ。