リーダーに必要なのは「指示ではなく依頼」の意味

リーダーがまずすること。メンバーの選び方について考えてみます(写真:kikuo/PIXTA)
組織で何年か働いていると、いつの間にか仕事を教える立場になり、会社によっては役職がつきます。「私はそんな器じゃないんです」「人を取りまとめるのが苦手で……リーダーとか役職が嫌なんです」。
キャリア・人材コンサルタントをしていると、そんなコメントをよく耳にします。コロナ禍でリモートワークになると、チーム社員全体の仕事も見えづらく、「どうやってリーダーシップを発揮したらいいのかわからない」「何か言ったらハラスメントになってしまうのでは……」といった悩みもあるようです。
これらはすべて発想の転換で解決できる、一種の誤解にもとづくコメントだと私は思います。なぜならリーダーとは役割にすぎず、また、リーダーシップはどんな仕事にも求められるものですから。本来もっとパフォーマンスを出せる人や組織なのに、誤解のためにもったいない状況におちいっている可能性があります。
カリスマ性も威厳も才能もいらない、普通の方がリーダーになるためのテクニックをお伝えします(『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』より抜粋し、3回にわたって紹介。今回は1回目です)。

「自分がトップ」のチームにしない

チームで仕事をする意味、それは「1人ではできない大きな仕事を実現するため」「個人がもっていない能力を全体で補うため」であるはずです。

でも現実には、自分が「リーダー」としてチームをつくり、運営するとき、つい「上司」として行動してしまっていないでしょうか? いいかえるなら、自分がすべてにおいて上でなければならないという責任感で、メンバーを選び、接してしまっていないでしょうか?

チームで目標を達成しようとするとき、これは逆効果です。

チームというのは、みんなで大きな仕事をしたり、自分のもっていない能力を補うために組むものですから、むしろ自分よりも能力の高い人を集め、それぞれをプロフェッショナルとして尊重して接したほうがうまくいきます。昨今の働き方や新技術の観点では、若ければ若いほど新しいものを持ち込んでくれます。

ここでのコミュニケーションは、「指示・命令」ではなく、「期待・依頼」にもとづくもの、つまり、上から目線で知ったかぶりをするのではなく、教えを請うべきだということです。

ただ本音をいえば、これって勇気が要りますよね。メンバーの目にはリーダーとして不甲斐なく映り、その心が離れていくのではないか……と。

でも実際には、すべての領域で自分が「トップ」であることを優先した結果、チームの目標が達成できないほうが、人心は離れていきます。いかに自分より優れた人に働きやすい環境を提供するかが、リーダーの仕事であるとすらいえるのです。

19世紀から20世紀を生き、「鉄鋼王」と称されたアメリカのアンドリュー・カーネギーの墓碑銘はあまりにも有名です。

「己の周りに、己より優れし人物を集めたる者、ここに眠る」

迷ったらこの言葉を思い出してください 。

異分子を入れ、多様性を意識

チーム内で反対意見が出ると、それは「議論」につながります。この議論とは、何のためにするものでしょうか。

議論とは、新しい価値をつくるためにするものです。今、自分が「正」しいと考える意見を正とすると、それに「反」する、または異なる意見が必ずあります。

この「正」と「反」を比べ、合意された「結論」を探すことが「議論」であり、この議論という作業で導き出された結論は、もとの「正」意見や「反」意見のいいところを取り込んで、より高いレベルになっています。 チームを組んで仕事をする醍醐味はここにあります。