リーダーに必要なのは「指示ではなく依頼」の意味

チームで仕事をするとき、もし、合意された結論に対して、新たな意見が出てきたら、さらに高いレベルに届かせるための議論がはじまります。

こうして、新しい価値をチームでつくり出していくのです。この価値をつくり出すきっかけが、メンバーによる「反対意見」の表明です。このやりとりを感情を交えず「冷静に」できる人が、価値を発揮するのです。

価値をつくる議論を生み出すためには、異なる意見をもつメンバー(異分子)をチームに迎え入れることが必要です。新しい価値を生み出すリーダーは、常に「異見」をもつ人を歓迎し、招き入れ、それを評価する人です。

チームメンバーの構成について、もう1つ気をつけたいことがあります。
それは、「性別」「ライフステージ」「キャリア」「専門性」「趣味」「出身地」など、プロフィールの多様性を考える、ということです。

「ダイバーシティ」という表現で市民権を得た概念ですが、これは過去に誤解のあった「マイノリティを差別しない」という消極的な意図ではありません。

ここでの多様性とはより積極的に、多様な背景をもつメンバーをチームに招くということです。これがかなうと、チームメンバーのもつ個々の能力を最大限に引き出したり、異なるものの見方や能力が混ざり合い、チームとしての付加価値が向上します。

「異業種からの転職組」「自分とは異なる専門性をもった人とのコラボレーション」「趣味や習慣、宗教観の違い」も、新たな考え方やものの見方の選択肢を増やします。

スポーツ経験者は、仕事をスポーツにたとえてわかりやすく解説しますが、これなどもよいです。新しい刺激はメンバーの視野を広げ、プロフェッショナルとしての成長をもたらします。

ライフステージ、キャリアの違いも重要です。刻々と変わっていく要素――たとえば、子育て世代や介護世代のメンバーがいたら、子どもの送り迎えの時間を融通する、介護休暇の取得をみんなでカバーするなど――をチームメンバーが経験できると、それはチーム全体の財産になります。

こうした経験のないメンバーは、自分がいずれ経験するときの予備知識になりますし、すでに経験ずみのメンバーは、その経験を活かし、直接・間接にメンバーを支えられます。

もし万が一、あなたのチームがいまだに「男性」「新卒生え抜き」「フルタイム正社員」、もっといえば「日本国籍」「日本語」のメンバーのみで固められたチームであるなら、むしろそれを弱みだとすら思うべきかもしれません。

ただし理念だけは共有している必要があります。 これが共有されていないと、多様性は裏目に出るリスクがあります。

相談できる人を1人は入れる

私自身も常に心がけているのが、チームには必ず相談相手になってくれる人に入ってもらうということです。

この人は、必ずしも現時点で能力の高い人でなくてもかまいません。ただし、リーダーであるあなたが信頼でき、口の堅い人である必要はあります。

こうした人に入ってもらうメリットは、状況をわかった上で、客観的なアドバイスを淡々としてもらえることです(本人はアドバイスをしているというよりは、感想を述べている程度の認識かもしれません)。

あなたからの相談は、たとえば「さっきのAさんへの私の指示の出し方、横で見ていてどうでしたか?」や、「Bさんのあの言い方には、どんな気持ちが込められていると思われますか?」と、リーダーシップの悩みが中心になります。

「あの言い方はまずかったかもしれません。Aさん、しばらく仕事が手についていませんでしたよ」とか、「Bさんは、最近Cさんとの折り合いが悪いんですよ、実は」という反応を得られれば、その後のAさんやBさんとのコミュニケーションに活かせます。