頭のいい人が実践する「情報」の絶妙なさばき方

網を張っているか否かで頭の残り方はまったく違ってきます(写真:KiRi/PIXTA)
毎日流れてくる膨大な情報から、どうやって自分にとって有益なものを集めてくるかは、今や大きな課題となっています。
どうすれば情報を取捨選択できるでしょうか。『東大教授が教える知的に考える練習』の著者、柳川範之・東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授が本書より解説します。

考えている人といない人で違う、情報の取捨選択の仕方

昔は、情報の量が限られていましたから、入ってくる情報は逃すことなく拾ってくる必要がありました。興味のある新聞記事を切り取ってスクラップブックに貼り付けたり、雑誌のページをスキャンしてハードディスクに保存していくということも、よく行われました。できる限りたくさんの情報を持っておくことに価値があったのです。

しかし、現代はあまりにも情報があふれていますから、片っ端から保存しておこうとすると、時間と手間がいくらあっても足りません。私自身、昔に比べて見ている情報や聞いている情報は非常に多くなってきています。もはや昔のままの情報収集術では、対応できなくなってきたのです。

では、日々洪水のようにやってくる情報に、どう対応していけばいいのでしょうか?

現代の情報処理でまず重要なポイントとなるのは、大量の情報の中から自分に必要な情報をいかにうまく集めつつ、不要な情報を捨てるかということだと思います。

つまり、どううまく情報を取捨選択できるかです。取捨選択といっても、頭の中に入れる情報をあらかじめ制限したり、絞っておくことではありません。無制限に頭の中に入ってきた情報の中から何を拾って、何を捨てるか、ということです。

この情報の取捨選択の仕方というのは、日頃、頭の使い方の工夫をしている人とそうでない人とで差が大きく出てくるところです。

実際、同じ情報に接したときでも、その情報がまったく頭に残らない人と残る人とが出てくると思います。普段から、その情報に関連することを考えている人は、大量の情報の中からその(場合によっては意外な)情報をピックアップできるのだと思います。もし多くの人が見向きもしない情報に価値を見出すことができれば、非常にオリジナリティーあふれた考える材料になるわけです。

一方、あまり考えていない人は情報が右から左に流れてしまって、あまり頭の中に残っていかないように思います。

もしかすると、普段から頭を使って考えている人の場合、情報の内容を一つひとつ吟味してからピックアップしているのでは、と思われるかもしれません。しかし、現実的に考えてみても、大量の情報を前にして、端からすべて内容を読んで判断していくことは非常に困難です。むしろ、情報に接した時点で何か直感的にピンと来るものがあって、その情報をピックアップしたと考えるのが自然です。

では、よく考えている人というのは、どのようなメカニズムで情報に接しているのでしょうか。

あらかじめ頭の中に網を張って情報を待ち受ける

ポイントはとても簡単なことです。それは自分の関心や興味に基づいて情報に接するということです。そうすることで、その人にとって、大事な情報が頭の中に残るようになります、関心や興味が、具体的にこういう問題を解決したいという問題意識になってくると、よりはっきりと頭に残るようになるでしょう。

この点は、頭の中で必要な情報がうまく引っかかる様子を、次のように模式化してみると理解しやすいかと思います。

もともとその人にあるぼんやりとした関心事や問題意識がもとになり、頭の中にぼんやりとした網がつくられてきます。そこに情報が流れてくると、大部分は網をすり抜けていくのですが、ごく一部の情報がその網に引っかかって残っていくのです。