10歳の子供が「手紙1枚」で大儲けした秀逸な方法

顧客の印象に残るために必要なものは、ちょっとしたアイデアと行動力だ(写真:RRice1981/Getty Images Plus)
ビジネスにおいて、知名度を上げることはとても重要。多くの競合があるなかで抜きん出るためには相応の工夫が必要ですが、筆者は小説『ケインとアベル』から、マーケティング的思考を学べると語ります。
最強知名度のつくり方 売上98%減からのV字逆転を実現した必勝術』から一部抜粋・再構成してお届けします。

私は25歳で起業しましたが、そのきっかけになったのが、21歳のときにユダヤ系アメリカ人の友人に「これ、面白いから読んでみて」と教えてもらった『ケインとアベル』(ジェフリー・アーチャー(著) 永井淳(翻訳)/新潮文庫刊)という小説です。

イギリス人小説家のジェフリー・アーチャーが1979年に発表した作品で、当時の私にとっては実に衝撃的な内容でした。

裕福な銀行家の息子に生まれたケインと、婚外子として生まれたアベル。対照的な境遇に生まれ育った2人の男児が、やがて成長してアメリカを代表する経済人になり、宿命の対決を繰り広げていく、という物語です。

10歳の男の子が実践したまさかの戦略

『ケインとアベル』の中のエピソードで、30年ほどたった今でも鮮明に覚えているエピソードがあります。ケインが10歳のとき、小学校でマッチ箱の収集が流行しました。そのときケインは、自分が住む地域では手に入らないマッチ箱を手に入れるために、全米のマッチメーカーに片っ端から手紙を出すのです。

「僕はウィリアム・ケイン、ボストンに住む10歳です。あいにく御社が製造しているマッチ箱は、私の住んでいる街には流通していなくて手に入れることができません。たいへん厚かましくて恐縮ですが、もし余っているマッチ箱があったら送ってもらえませんか。少ないお小遣いで買った返信用の切手を入れておきます」

健気な子どもからの手紙を受け取ったマッチメーカーは、「送料はうちの負担でいいから、ありったけのマッチ箱を送ってやろう」となりました。

ケインはそうやってアメリカ中から集めたマッチ箱を放課後、友人にオークションで売りさばきます。そして、貯めたお金を今度は株式投資に注ぎ込み、さらに儲けるわけです。それが当時の私にとってとてもインパクトがあり、今でもエピソードを細部まで語れるくらい深く記憶しています。

こんなエピソードもありました。ボストンの駅に旅行客が到着したとき、駅からホテルまでたいした距離ではないにもかかわらず、大勢の人がタクシーを利用していることに気づきます。

「商売をやるのに年齢は一切関係ない」

これは「商売になる」と考えたケインは、中古の手押し車を買います。駅から出てくる旅行客に「ほとんどの人がタクシーを利用しますが、ホテルまではタクシーで行くほどの距離ではありません。僕が手押し車で荷物を運びましょう。代金は、タクシー代の半分で構いません」と話し、どんどん客を獲得していきます。

客を奪われたタクシー業者からクレームが相次ぐようになると、ケインは荷物を運ぶ事業を丸ごとタクシー組合に買い取らせたのです。

こうしたケインのエピソードから、「商売をやるのに年齢は一切関係ない。ビジネスセンスがあればお金を生み出せるのだ」と痛感させられたのです。一方のアベルも、恵まれない環境にありながら才覚一つでのし上がっていく。そんな2人の姿が本当にかっこよかった。

私はがぜん商売に興味を持つようになり、世の中のあらゆる商売がどういう仕組みで儲けているかを勉強するようになりました。以来、『ケインとアベル』は私のバイブルであり、マーケティングの教科書になっています。