「わー、懐かしい! 入力とか超めんどくさかったよね」
部下・後輩・年下と話していて、「自分たちの頃と違うなあ」とショックを受けて、反射的に自分たちの世代で昔話に興じてしまう人がいます。
懐かしいあの頃。楽しかった日々。苦い経験すら、今はいい思い出。ああ、自分たちはがんばった、よく生き抜いた……。そうやって互いの健闘をたたえ合い、信頼を確認し合う。悪いことではありません。職場・コミュニティーの醍醐味とも言えます。ですが、それを「下」がいる場でいきなりやるのは、不正解です。
まず大前提として、内輪ウケはよくありません。相手としては、知らないことばかりだし、関心だってありません。「へー、そうなんですか?」「その頃のこと聞かせてください」と前のめりになってくれるわけがないのです(そういう人がいたとしても、レアケースと思っておいたほうがいい)。
さらに、そういう昔話が危険なのは「なんだかんだ言って、今の子たちは恵まれているよね」「そうそう。なんかエネルギーを感じない」など、「下」の世代への批判に発展しかねないところ。相手としては、昔話がつまらないことは百歩譲って我慢するとしても、いつ説教されるかわからないとなると、表面上はニコニコしていても、心の中では「早く終わってくれないかな」と祈るような気持ちに。
とはいえ、久しぶりに同期と話せて興奮することもあるでしょう。「下」との世代ギャップを共有したい気持ちもわかります。
部下・後輩・年下の前で昔話に興じる際の正解は「ちょっと昔話していい?」「同期トークしていい?」とひと言断ることです。
私たちはこれからひとしきり、昔話をします。懐古してひたります。しばしの間、我慢してください。そうやってエクスキューズすれば、相手も心の準備ができます。「説教」に発展しないとわかっていれば、気もラクですし、その間、トイレに行ってもいいし、スマホをいじってもいい。若い世代同士で話し始めるのもいいでしょう。
内輪ウケはなるべくしない。でも避けられないときにはひと言断る。それがその場を仕切る立場の配慮というものです。
「あそこのビルは昔、○○商事が入っててさ。若い頃は毎日通ったもんだよ」
「へー、今はそうするんだー!? 私が新入社員の頃とずいぶん違うなー」
「その頃、●●っていう歌手が人気でね。あ、今の子は知らないか。懐かしいなあ」
部下・後輩・年下と話していて、何かにつけては過去の話をする人がいます。
仕事の経験、プライベートの知識、自分なりの価値観をシェアしたい。昔の思い出話を聞いてほしい、「そうなんですねー」と感心してほしい……。ですが、これは不正解です。
そもそも、人は本能的に自分の話をしたいもの。 いつもなら「相手の話にも関心を持とう」「置いてけぼりにする内輪ウケはよそう」とぐっとこらえている人でも、「下」を前にすると、気が緩んでしまいがち。
相手としては、なかなか関心を持ちにくいうえに、口を挟みにくい。「共通の話題を通じて、対等に同じ目線で会話をする」という理想からはほど遠い話し方です。
結果的に「やれやれ、自分語りが始まった」「ずいぶん楽しそうですけど、こちらは興味が持てません」とうんざりされてしまうというわけです。
「いやいや、相手だって楽しそうに聞いてた」と思うかもしれません。もちろん本当に感心してくれることもあるでしょう。ですが、相手は「下」の立場であることを忘れてはいけません。興味がなくても興味があるそぶりをしなくてはいけない、という関係の不公平さが前提としてあるわけです。