「うちの部にも、大谷翔平を招聘(しょうへい)しようか、なんつってね」
「はい、お釣り、200万円!(笑)」
部下・後輩・年下を前にして、どうでもいいギャグやくだらないダジャレを言う人がいます。疲れている時、ほろ酔いの時、楽しくなっている時。いつものストッパーが外れて口に出してしまう、我慢がきかない……。ですが、それは不正解です。
なぜなら、「下」の立場ならそれを言わないだろうから、です。
年齢を重ね立場も上がり、「上」の立場になったからこそ、心のストッパーが外れるわけです。「これぐらいいいだろう」「受け入れてもらえるだろう」と油断するから、つい口から漏れてしまう。いわば「上」の立場の特権。
「下」はスルーするわけにもいかず、苦笑いするしかない。これでは人間関係として不公平と言わざるをえません。ハラスメントにも似た構図です。
「いやいや、そっちだって言ってくれてかまわないよ」「一緒に盛り上がろうよ」と思うかもしれませんが、「下」としてはそうもいきません。場の空気を寒くできないし、若い人の場合、「恥」の気持ちもまだまだ強い。
「そんなー。こっちだって、悪気があるわけじゃないんだから」「むしろ、がんばって場を和ませようとしてるんだよ、サービス、サービス」という気持ちもわかります。ですが、そのような善意は相手に届かず、むしろ「わが物顔に振る舞っている」という印象を与えてしまいます。
部下・後輩・年下がいる場の緊張をほぐしたいなら、リラックスし、普通に会話をしましょう。ギャグやダジャレで笑わせてやろうと肩に力を入れたり、「無礼講だ!」とガソリンを注ぐのではなく、とりとめもない雑談をし、適宜メンバーに話を振る、ぐらいにとどめます。
「上」の立場に期待される役割は、「場を盛り上げること」よりも、むしろ「治安の維持」です。
酔っ払ってからんでいる人はいないか、嫌な思いをしているメンバーはいないか、会話がヒートアップしすぎているテーブルはないか、と目を配る。「まあまあ」となだめ、「こっちで話そう」と引き取る。これが正解です。
みんなが安全に快適に過ごせるように目を配り、心理的安全性を担保することこそが、飲み会における「上」のお仕事。ヤヤウケするオヤジギャグではありません(笑)。
「私たちの頃は、ほら、超氷河期だったから」
「そうそう。『100年に一度の大不況』とか言われて。マジかよーって」
「俺らが若い頃なんて、まだ今の管理システムになってなかったし」