GAFAが“医療”に参入したら「こんなこと」もできる

そして、GAFAはデータを豊富に持っています。どういう単語で検索したか、どういうヘルスケア商品を購買したかというデータも大量に持っているわけです。事前にマーケティングする必要がありません。

さらにアマゾンは、「Halo」というウェアラブルとアプリを連動させていますし、グーグルも、ウェアラブルデバイスのフィットビットを買収しました。近々、スマートウォッチが発売されるという話です。

ウェアラブルのシェアでトップを誇っているのはアップルです。「アップルウォッチ」によって、自分たちが欲しいヘルスデータを、狙い撃ちして取得しているとも言えるでしょう。

これらのIoTやウェアラブル開発の動きから、各社はPCやスマホから収集された断片的なデータから、より生活の実態に近いデータを取りに行こうとしていることがわかります。

日本でプライム・ヘルスが実現しない理由

本書では、アマゾンの未来のヘルスケアサービスを「プライム・ヘルス」と呼んで解説していますが、これはアメリカなら実現するだろうと思います。

アメリカは、自分で保険を選んで加入する制度です。毎月高額な保険料を払っている人なら、すぐに大きな病院で診てもらえるけれど、お金がなくて安い保険に加入していると、たとえ病院の前で倒れても、「ここはあなたの保険では利用できませんよ」と言われるということが起こります。

制度がよくないために、困っている人がたくさんいる。となると、やらない理由がありません。アマゾンとしてもビジネスチャンスということになるでしょう。

一方、日本の場合は難しいですね。国民皆保険で、公的な医療サービスの価格とアクセスがよく、医療制度が高いレベルで維持されています。困っている人もそんなに多くないでしょう。

そして、規制もあります。たとえば、オンラインでの初診はダメというルールがありました。現代の医学教育は、対面での診療を基本に教育していますから、対面でないときにどうすれば医療の質を維持できるのかという考察がなされていないので、簡単に導入するわけにはいかないのです。

コロナ禍で少し緩和されて、条件つきなら初診からオンライン診療できるようにはなりましたが、まだまだ未成熟ですし、受け入れられにくい状況です。

この点はヘルスケアでも同様です。弊社は健康アプリを手がけていますが、健康づくりや健康管理のためのサービスは、やり方によっては、医療機器の認証をとらなければならなくなったり、医師のみに限られる医療行為に当たったり、規制によるグレーゾーンが存在します。踏み込みすぎると、医療行為とみなされて、サービスそのものがNGになってしまう可能性もあります。

規制産業だからこそディスラプションは起きやすいのですが、その規制が、テクノロジーの進歩に追いついていない。

グレーゾーンであっても、GAFAなどのグローバル企業が海外の事例を持ち込んで突破するか、もしくは、規制のせいでリスクがあるから踏み出さないという二択になりますが、日本の企業は後者だと思います。規制にひっかかるからサービスを停止しなさいと言われたら、困りますからね。

オンライン診療が普及するには、IoTやIoMT(Internet of Medical Things)が普及していく必要もあります。

先ほども紹介しましたが、「ハチに刺されました」となったら、インターネットにつながったカメラで患部を写して、見てもらう。医師も、映像がしっかり見られれば、「この腫れ方なら大丈夫だ。塗り薬はこれがいいだろう」という判断ができます。

現在、のどの奥を見るデバイス、デジタル聴診器などのデバイスはあります。すでにネットを介して、のどの奥の様子を見たり、心臓や肺の音を聞くことができるわけです。