本書では、アマゾンが医療・ヘルスケア業界に「ディスラプション」を起こす未来が予言されています。私も、その見方には賛成します。
アマゾンには、ほかの企業にはない強みがあります。それは生活のインフラのなかに入り込み、その一部になっている企業だということです。特に、リアルなモノやサービスに直接アクセスして、消費行動が起こせるところが強いですね。
本書では、アマゾンのオンライン診療について、次のようなことが予言されていました。
「息子に発疹が出たら、アレクサに呼びかけて皮膚科医につないでもらう。すると医師は、インテリジェント・カメラに向かって息子の腕を上げて見せるよう指示する。
その皮膚科医はおそらくアマゾンの従業員ではないだろう。(中略)
ただし医師は収入の一部を”プライム・ヘルス”(私はアマゾンが地上で最も活気があって便利なリモート・ヘルスケア・プラットフォームをこう呼ぶだろうと思っている)の支払いに充当するはずだ。(中略)プライム・ヘルスでは、体の3Dスキャンや、2020年8月に発表したフィットネス用ウェアラブルHaloを通してバイタルサインを読み取れるようになるだろう。
処方箋がアマゾン傘下の薬局ピルパックに送られ、そこからアマゾンの物流拠点にステロイド軟膏の発送が指示される。大都市圏では1時間以内に配達されるだろう」
こういったことは、現在のアップルやグーグルではできません。アマゾンは、驚くほどさまざまなリアルなモノ、リアルなサービスにひも付いており、検索して、注文して、手元に届くという一連の流れができている。非常に勉強になりましたし、面白く読みました。
アマゾンにかぎらず、ビッグテックは医療・ヘルスケアに注目しています。なぜなら、まだ手を出していないその領域は、困っている人がたくさんいる一方で、参入障壁が高い大きな市場だからです。つまり、ディスラプションを起こしやすいのです。
ビックテックのいちばんの強みは、やはり、生活インフラとしてすでに浸透しているという点でしょう。顧客とのチャネルをつくるのは、かなり大変なことですが、いまどきグーグルマップを使っていない人はいませんし、より便利に使いたい人はログインをしています。これは強みです。