人生100年といわれるようになり、定年前後で再就職活動について考える中高年男性も多いだろう。実際、再就職を行おうとするとき、1つの選択肢となるのが公的機関の利用である。
一般的にハローワークやシニアコーナーで求人が多いのは、警備、マンションの管理人、ビル清掃、学校の用務員などである。中小企業の事務職の採用ニーズ自体は少なく、倍率は高い。中には、事務職にこだわり100社応募する人や、逆に、1つの事務職の求人に100人近くが応募するケースもある。
東京しごとセンターでは、マネープランについての情報提供も行っており、シニア生涯ワーキングセミナーを年60回、各市区町村で実施している。どの時点で家計の収支がマイナスになるか、働いていればどの時点まで黒字になるかということを知ることによって、働く意欲を高め、子どもの世話にもならず、働きながら豊かな老後を過ごすことにつながる。
しごとセンター課高齢就業支援係長平野氏によると、「45歳ぐらいからマネープランを立てることも大事である。大企業出身の方々は、再就職活動をされると、たとえば1000万円年収をもらっている方の場合、最低600万円ぐらいほしいという場合がある。
ただ、実際そのような仕事は少ないので、再就職の現状を伝えると、住宅ローンや養育費が払えない、といわれる方が少なくない。働きながら楽しむことが可能な生活が実現できるように、マネープランを早めに立てておくことが必要だ」。
マネープランを早く立てておくことは、将来の仕事を柔軟に選択していくうえで重要であるといえる。
定年後の生活を考え始めるミドル・シニアにとっては、お金の問題は、今後の生活そのものに大きな影響を与える重要な問題である。キャリアチェンジをしていくにしても、住宅ローンの返済状況など、経済的な余力によっては選択肢が狭まる可能性がある。
日本総合研究所の調査では、高学歴中高年男性に年収を尋ねているが、1000万円以上と回答している高学歴中高年男性は約3割にのぼり、「600万~800万円未満」(22.1%)、「800万~1000万円未満」(18.0%)と続く数値をふまえると、約7割が600万円以上の収入を稼いでいる。一般的には、経済的に豊かな生活を送っている人が多いことが想像できる。
マイスター60が実施した調査によれば、定年到達時の賃金と比べて再雇用後の賃金が半分以下になった人は約4割に上る。再雇用後の仕事内容には満足しているものの、約7割が給与について不満を持っていることが明らかになっている。
マイスター60が定年退職後に再雇用で働いている全国の男性に対して実施した調査では、これからの人生、「健康」「お金」「生きがい」「人間関係」の中で、最も自信がないものとして、「お金」をあげている人の比率が最も多く、約46%に上る。健康や生きがい、人間関係に比べて、お金の問題は、年をとってから努力をしても、挽回がむずかしいということだろう。