日本人が「GAFA人材に勝てない」メンタル5大問題

「雑用は下に任せる」対「何でも自分でやってみる」

日本企業では、DXの本質を捉えきれていない上層部も少なくない。「自分はそういうものには疎いから、君たち頼むよ」という感覚で担当役員に任せ、その担当者もよくわからないからと、安易に外部事業者に丸投げしてしまう。いわゆるITゼネコン体質です。

例えば、台湾のデジタル担当大臣として脚光を浴びたオードリー・タンは、新しいアプリケーションを作るとき、シビックハッカーと呼ばれる一般の個人プログラマーなどから協力を得ています。一方、日本のデジタル庁はというと、NTTや旧電電系のNEC、富士通などの大企業に巨額の予算を付けて発注するわけです。

DXを進めるには、他人事として外部事業者に丸投げするのではなく、自分事として何ごとも自分でやってみる「ハンズオン」のスタンスが重要です。多くの日本企業では、上に行けば行くほどみんなが「ハンズオフ」になり、自分では、ツイッターもフェイスブックもペイペイも直接使ったことがないというような経営幹部も珍しくありません。

アメリカの会社でも古い体質の企業では事情は同じですが、西海岸の若いIT系企業の経営者たちは、年配者でも「ハンズオン」です。

フロンティア精神、パイオニア精神などともいわれるように、もともとの国家としての成り立ちや体質が「Do it yourself」の国ですから、新しいものや未知のものに対する抵抗感や警戒感が比較的低く、すぐに自分でも触って使いこなしてしまう。この習性の違いは案外バカにできません。

グーグルにいたとき、当時のエリック・シュミットCEOは、雑務を秘書に頼るのではなく、基本的に何でも自分でやっていました。ランチも社内のカフェで一般社員に混ざって食べているのが普通でした。

古い体質の企業にはこういうフラットでカジュアルな感覚が希薄で、偉くなるとどんどん壁を作って、最後は役員フロアや役員室に閉じこもってしまいますし、社用車や公用車が付くので一般の交通機関も使わなくなります。

しかし、今の時代、そのようなスタイルでは、世の中はおろか、社内の風向きすら、あっという間に読み取れなくなってしまいます。

「不正には目をつむる」対「不正は許さない」

グーグルでは、「Project Maven」というアメリカ国防総省の軍事プロジェクトに協力しようとして、社員が反発し、何千人もが会社を糾弾する声明文にサインし、強硬派は退社するなどして、プロジェクトへの参加が中断されるという出来事がありました。

インターネットによって、弱者の声や、名もない人の声も、聞こえる時代になりました。「Wisdom of the crowds(群衆の叡智)」は民主主義の根底を支える重要な概念ですが、インターネット時代のキーワードでもあります。われわれ1人ひとりには、さまざまな知恵や意見があり、それらをなるべくたくさん集めれば、よりよい意思決定ができるようになるはずです。

台湾の政治にデジタルの力を生かしているオードリー・タンのやり方も、まさにそうです。いろいろなデジタルプラットフォームを作り、政府内の縦割りを解消する手段に使ったり、市民の声を拾って政策に活かしたりといったことを活発にしています。幅広い知恵を集めて、足し合わせ、さらに良いソリューションに昇華させていくことが、デジタル時代の基本スタンスであるべきでしょう。

グーグルにはWisdom of the crowdsが機能する社内文化があり、不祥事防止にも役立っていました。社内で何か良からぬことが見つかると、従業員たちが1人ひとりの正義感や倫理観を大切に「これは何かおかしくないか?」と騒ぎ出します。