プレゼンが全然響かない人に通じる残念な共通点

そのあと、何の話をどの順番で話すか、いわゆる「話の構成」の正解は、話す内容や聞き手がその時何を求めているかによって、無限にあります。少なくとも、「ふつうはこうだから」といった思考停止の状態で構成を決めることだけは避けるようにしましょう。

構成のしかた、今度はスピーチを例にお話しします。例えば結婚披露宴。スピーチの目的は、新郎新婦のすばらしい人柄を知ってもらい、一緒に門出を祝うというものですね。

そんな披露宴でよくあるスピーチはこんな感じです。

「新郎の○○さんは、大学時代、体育会のラグビー部で一緒に過ごした仲で、非常に責任感が強く、誰にでも優しく、背中で皆を引っ張っていってくれるような男でした。社会人になってからも、忙しいスケジュールを縫って皆が集まれる機会を調整し、毎年同窓会の幹事をやってくれるなど、面倒見のいい男で……」

確かに、「責任感がある」「誰にでも優しい」「皆を背中で引っ張る」「面倒見がいい」なんて、すばらしい人物であることはわかります。でも、何かが足りない……。

「広く浅く」ではなく「狭く深く」

それは「具体性」です。「責任感がある」などの特性、特徴を表すことばは、なんとなくイメージは浮かびますがぼんやりしていませんか。だって、世の中に「責任感がある人」はいくらでもいますから。ここは、やはりその人ならではの性質としての具体的な説明が必要なのです。

もちろんその説明のためには時間が必要です。そうなると、ほかの「誰にでも優しい」「皆を背中で引っ張る」「面倒見がいい」などが時間的に言えなくなります。どうすればいいのか。

私ならこうします。彼の人柄でいちばん伝えたいことが「責任感がある」ということなら、そのほかの特徴を伝えるのをきっぱりあきらめるのです。そのかわり、「責任感がある」ことを、具体的な例を出しながら丁寧に語っていくようにします。「責任感がある」と感じたのは、どんな場面だったのか。そこで彼は何を話し、どんな行動をとったのか。そこに自分が感動したのは何が原因だったのか……。自分で実際に見聞きし、心が動いたのですからきっと語れるはずです。そうすることで、ほかの誰でもない「責任感がある」彼の物語が語れるのです。

「責任感がある」「誰にでも優しい」「皆を背中で引っ張る」「面倒見がいい」など、こんなにいいところがたくさんあるなんて素敵! なんて思う方も中にはいるかもしれません。

しかし、誰にでも言えるような浅いことばをたくさん並べるよりも、その人を最もよく表した性質に絞って、その話を具体的に深く説明していく。こちらのほうが、聞いている人の心にひびくスピーチになることは間違いありません。

「広く浅く」ではなく、「狭く深く」語っていくのが有効なのは、ビジネスのプレゼンでもいえることです。もちろん、全体像や定量的なデータを示すことが基本的に大切であることは言うまでもありません。そうした客観的な情報が聞き手の論理的な部分に訴えるものだとすると、狭く深く具体的に語っていくのは、聞き手の感情の部分にふれるやり方です。ビジネスでは特に、この2つの方法をうまく使いこなす必要があります。

感情を動かすカギ=エピソードの語り方

たとえば、社内での新商品の提案。街角でお客さまにアンケートを行った結果をプレゼンするとしましょう。よくあるプレゼンはこんな形ではないでしょうか。

「駅前のスーパーでアンケートを行いました。こちらの円グラフをご覧ください。答えてくれたのは20代から40代の主婦50人。実に67%の方がパッケージをほめてくれました」

客観的データとして理解できますね。そこにこんなエピソードを入れたらどうでしょう。