プレゼンが全然響かない人に通じる残念な共通点

心を動かすプレゼンに最も重要な要素とは? (写真:Fast&Slow/PIXTA)
最近は、企業のトップや広報、技術開発などの人々が、社員や株主に対してはもちろん、お客へ向けてメッセージを送る機会、それが公開される機会が増えてきています。一般的なビジネスパーソンでも、会議や営業先でプレゼンやまとまった意見を求められる機会が増し、その傾向は、テレワークが広がり、オンラインでの会議が日常化するなかで、ますます高まっています。
「プレゼンのヘタな人が知らない『話し方』3大要素」(2021年12月22日配信)に続いて、元NHKアナウンサーの松本和也氏の著書『元NHKアナウンサーが教える 話し方は3割』から一部抜粋、再構成してお届けします。

話したいことを並べただけでは伝わらない

プレゼンやスピーチなど「まとまった話」を「確実に相手の心を動かすように」話したい場合、大事な要素は「話すテクニック」3割、「話す内容」5割、「スライドを含めた見せ方などの演出」2割。これらの要素をしっかりと区別して磨くこと、特に話す内容はいったん原稿に書くことが大切であることを、前回お話ししました。

今回はプレゼンの際、重要度5割を占める「話す内容」の磨き方のコツです。

これまで何千件ものビジネスパーソンのプレゼンを仕事で聞いてきましたが、いつも思うのは「調べたこと、言いたいことを、ただ並べただけ」のものが多いなぁということ。例えばこんな感じです。

「今日は、新サービス○○についてお話しします。その前に自己(自社)紹介をさせていただきます。(自分の職歴や部署の変遷、会社の沿革や概要などを数分かけて話す)
次に、○○が生まれた背景とその課題についての現状認識をお話しします。(ここが短くても3分。長いと10分以上のケースも)
では、新サービス○○についてご説明します。(ここが思いのほか短い。3分ほどで終わるケースも)」

何がおかしいの?と思われたでしょうか。もしそうだとしたら、少し注意が必要かもしれません。説明していきましょう。

最初の「新サービス○○についてお話しします」。これはいいんです。問題はその次。「その前に自己(自社)紹介をさせていただきます」。これがダメなんです。

なぜこうなるのか、私は不思議でなりませんでした。プレゼンした人に聞くと

「だってふつう、まず自己紹介は必要ですよね」

こう答えられることがほとんどです。

この「ふつう」が問題なのです。なんとなく、「ここは自己(自社)紹介だよねー」と話しているのではないでしょうか?

聞き手の立場に立ってみましょう。「新サービス○○についてお話しします」と言ったら、次は何を聞きたいと思いますか?

「○○はどういうものなのか」「どれくらい画期的なものなのか」などを、まずはざっくりと説明してほしいはずです。そんな思いを持っている人に、

「その前に、自己(自社)紹介を……」

なんて言われるとどうでしょう。何かはぐらかされた感じがしませんか?

「背景」や「現状認識」を長々話されるのも退屈

そもそもプレゼンターの自己紹介や会社紹介に関心があるでしょうか?

早く本題について話を聞きたいはずです。

同じように、本題に入る前に「背景」や「現状認識」を長々と話されるのも聞き手にとっては退屈です。しかし、話す側にとっては逆。話し手にとって非常に話しやすいのが、この「背景」や「現状認識」なのです。理由は簡単。ちょっとネットを検索すれば、自分が話したい内容に関する事例やデータはすぐ手に入るから。それを話しておけば、もっともらしい話をしているような気分になれるからでしょう。

プレゼンでもスピーチでも大切なのは、最初にひきつける部分、いわゆる「つかみ」があるか、です。「つかむ」ためには、長い自己紹介や現状認識など「余計な前置き」は不要。とにかく最初に、「へー、面白そう。この先も聞いてみたい」と思わせるのです。