こうして広告の受け手側があまりにもプッシュ型広告に慣れすぎたせいで、プッシュ型広告の威力は相対的に下がってしまいました。現在の広告の世界のトレンドでは、「プル型営業」のほうがイケてる、とされており、多くの広告関係者が「プッシュ型からプル型へどう移行するか」みたいなことを言っている、という状態です。
TikTokは、「単なるプッシュ型広告」でないことはもちろんですけれども、実は完全な「プル型」でもありません。あえて言えば、「プッシュ型とプル型のハイブリッド」です。ここがTikTokと他のSNSとの大きな違いなのです。
YouTubeでも雑誌でも、最初の一手、つまり真っ先に触れるコンテンツは消費者が自分で選ばなければいけませんが、Tik-Tokは初手の段階で、アプリを立ち上げさえすれば、わざわざ見たいものを検索しなくても、勝手に動画が流れてくるのです。「探さなくても勝手にコンテンツが流れてくる」というのはつまりテレビCMと同じなので、ここだけ見れば典型的な「プッシュ型」なのです。
もちろん「プッシュ型」にも「プル型」にはない優れているところはあって、つまり「せっかく作ったのに誰にも見られない」ということが起こりにくいのです。どんな動画でも、たとえつまらなくても、必ずある程度の回数は再生されるシステムになっています。
TikTokのAIが勝手に視聴者に届けてくれるのです。
私の体感としては、最初の300再生くらいは保証されているイメージです。たとえばYouTubeで、誰もファンがついていない状況で、300再生される、というのは、実はなかなか高いハードルです。それ未満の再生数の動画はいくらでもあります。
さらにTikTokの場合、そこから先は、拡散されるための最適な導線が作られているため、「おもしろいのに人の目にまったく触れない」ということが他の媒体に比べて圧倒的に少ないのです。
動画を投稿するなら、できるだけ多くの人に見てもらいたいはずです。そのためには、ファンが少ない時期の初動がかなり大事になってきます。特にビジネス利用で即座に数字が求められる投稿者にとっては、TikTokはかなり心強いプラットフォームと言えるでしょう。
まず誰かに見てもらえさえすれば、そこから先の導線は拡散されることに最適化されているため、動画がおもしろければ「プル型広告」のメリットも存分に享受することができます。動画のクオリティが必要とされること以外に、動画を見つけてもらわなければならない他の媒体と比べて、TikTokは、ユーザーにとっては見たい動画を勝手におすすめしてもらえる、投稿者にとっては興味のある人に勝手に動画を見てもらえるうえに拡散までしてもらえるということになります。
最終回では、実際にTikTokをビジネス活用して動画を投稿する上で、頭に入れておきたい具体的なポイントをお伝えします。