さて、この調査の中に含まれていないSNS があります。それが「TikTok」です。
TikTokは中国のByteDance(バイトダンス)社が運営するショートムービー配信アプリで、2016年に中国版がリリースされました。2018年には全米のApp Store無料アプリ部門で年間1位のダウンロード数となり、2021年には月間アクティブユーザーが全世界で10億人を突破しました。日本での月間アクティブユーザー数は2018年時点で950万人以上で、20代や30代の女性がメインユーザーとなっています。一言で言ってしまえば、今いちばん「伸びている」SNSです。
日本では、リリース直後は、単に「若者たちの間のみで一時的に流行しているもの」と見られ、ビジネスに結び付けられることはありませんでした。しかし現在では大企業から個人までTikTokをビジネス的観点で利用しようと、各々模索を続けています。その利用者数の伸びが決して無視できるものではなくなってきたからです。まったく同じ流れを、初期のウェブサイトも、TwitterもYouTubeもたどってきました。
では、そもそも、数あるSNSの中で、今なぜ他のSNSではなく、TikTokに目をつけるのか。そこにはいくつかの理由があります。まずはそこから、嚙み砕いてお話をしていきたいと思います。
TikTokが現時点で、他のSNSに比べて間違いなく「すごい」と言い切れるのは、「ユーザー数の伸び」「流行度」です。
つまり、世界で流行の最先端にあって、ユーザー数がどんどん伸びているのに、まだ公式にビジネスに活用できている企業が少ない。ということは、成長しているのに競争相手が少ないということです。
たとえばTwitterなら、もう公式アカウントを開設していない企業を探すほうが難しいかもしれません。YouTubeも、プロのYouTuberたちがユーザーを奪い合っていますから、今からいきなり参入したところで、投下したコストに見合うリターンを得るのはかなり難しいと思います。
これがTikTokならば、まだ参入する余地があるのです。もちろん、20~30代の女性から絶大な支持を得ている、という形でターゲットがハッキリしているのも大きなメリットです。ここまではなんとなく理解している方が多いと思います。
しかし、TikTokがよりビジネスに向いている理由は、単に先行者利益が、とか、ユーザー層が、とかいう部分だけではなく、もっと根本的な部分にあります。TikTokの最大の強みは、TikTok自体のシステムそのものにこそあるのです。
たとえば最大手の動画配信サービスであるYouTubeは、そもそも「動画を共有するための置き場」としてスタートしています。それは現在でも変わっておらず、基本的な考え方は「たくさん再生される動画を、多くの人の目に触れるところや『あなたへのおすすめ』に置いておけば、さらに多くの再生数が稼げる」というものです。
広告の種類には「プッシュ型(企業が主体となって発信し、顧客は受信するだけの広告。テレビCMや新聞広告など)」と「プル型(顧客が自発的に興味を持ちサービスを利用・拡散する広告。リスティング広告や自社ウェブサイト、SNSなど)」というものがありますが、YouTubeは典型的な「プル型」のサービスと言えます。
「広告主が見せたいコンテンツを見せる」という意味では「プッシュ型」のほうが理想的なのは当たり前ですので、旧来の広告はずっと「プッシュ型」が主流でした。そもそも、広告に触れた人がそれを拡散しようにも、その手段がなかったのです。