酒のチカラに頼らず部下と交流深める「4つの技」

共通点を見つけて話しかけてみる

例えば、初対面の相手との会議でも、自分と同郷なことがわかったりすると「えー、そうなの! 僕は○○小学校ですよ。もしかして同じですか?」「あー、あそこのお店、よく行きました! 今もありますか?」なんて話になり、もうぐっと親しくなりますよね。このような場を、意図的に作り出せばよいのです。

そのためにできることは、例えば「笑顔」です。とても簡単なことですが、この第1歩ができない社会人が多いのです。特に上司になればなるほど「厳しい顔」をするのが仕事だと感じている人も多くいるでしょう。でもそれが、人間関係を育むための壁となっているのです。

人間には「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞があります。これによって私たちは、他者との間に相互作用が発生し、無意識のうちに環境から強い影響を受けてしまいます。そのため、自分から笑顔になり、オープンになると、次第に相手の警戒心が解かれ、相手も少しずつ気持ちがオープンになります。場を明るくしたければ、自分から始める。ここが大切なポイントなのです。

例えば、リーダーはその責任感ゆえに、場やメンバーを統制しようと試みます。しかし、人の心は操作できませんし、操作しようとすると逆に働いてしまうものです。それは、誰もが「自分の生き方は、自分で選択したい」と強く思っているからです。

だから、リーダーは人をコントロールしようとするのをやめて、人が前向きになるための場づくりのアイデアを考えましょう。どうすれば一人ひとりが積極的になるか、メンバーとともに真剣に向き合うのです。そうすれば、お酒のチカラに変わるクリエイティブなアイデアがいろいろ生まれてくるでしょう。

例えば、次のような工夫は効果的でしょう。

① 会議のはじめに、ポジティブな話題をみんなでシェアしあう
② 個々にライフラインチャートをつくり、これまでの人生や職歴をシェアしあう
③ 会議では、仕事の進捗だけでなく、メンバー個々の忙しさや悩みをシェアしあう
④ 会議ごとに、メンバーの抱える仕事の悩みを、みんなで協力して解決しあう
 

このような工夫で、お互いの関係性は育まれて「本音で話せる場」になっていきます。この「ざっくばらんに、良いことも悪いことも話せる」ことは、これまでのビジネスではあまり意識されてきませんでした。ですが、最新の経営学では「チームの生産性を高めるために最も重要なこと」のひとつとして認識されています。

グーグルの大規模な実験によって有名になった「心理的安全性」という言葉が、それを表しています。チーム内の心理的安全性が確保されているほど、メンバーは肩の力を抜いた自分らしい姿でプロジェクトに向き合い、リスクが存在する言動であっても、目標達成のために発言できるようになります。結果として、チームの生産性を高める成功因子となるのです。

お酒の場がマイナスに働くことも…

なぜ、ビジネスでお酒が重宝されていたか。それは、お酒が「心理的安全性を高めるためのツール」だったからなのです。しかし、お酒は万能ではありません。むしろ「心理的安全性」にマイナスに働くこともあります。

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例えば、飲み友達の間で同じような意見が繰り返されるため、愚痴グループになってしまう、お酒を飲む人と飲まない人の境界をつくってしまう、お酒の場が好きではない人に対する同調圧力となってしまう、などです。

これから大切なことは、お酒が作り出していたポジティブな側面を生み、逆にお酒が作り出していたネガティブな側面を排除するよう、科学的なアプローチで「心理的に安全な場づくり」をすることなのです。