いま、企業内でのコミュニケーションに大きな変革が起きています。お酒を飲みながら職場の仲間と親交を深める「飲みニケーション」の支持率が急落しているのです。
日本生命保険が2021年11月に発表した調査結果では、回答者の6割が飲みニケーションを「不要」と答え、2017年の調査開始以来、初めて「必要」の割合を上回りました。新型コロナウイルス禍で、お酒に頼らない親睦の在り方を模索する人が増えているようです。
ですが、「お酒の場」はこれまではチームの相互信頼の関係を育むために、有効に活用されていました。その手段が使えなくなり、個を大切にする若者と関係を深めるにはどうすればいいのか、悩んでいるリーダーが増えているのです。
では、ビジネスパーソンが頼っていた「お酒のチカラ」とはなんでしょうか? それは「自己開示によって、メンバーの相互理解を促すチカラ」です。この段階を超えると、対人関係における「心理的安全性」がぐっと高まり、お互いに「本音で言いあえる間柄」になるのです。
あなたは、はじめて会った人とすぐに打ち解けて、本音を言えるタイプですか? 多くの場合、相手のことをよく知らないうちは、少なからず警戒することでしょう。「どんな人なんだろう」「なにを求めているんだろう」「自分にとって味方なのか敵なのか」など、いろいろな考えが渦巻く人も多いと思います。知らない相手に対して不安を抱くのは、ごく当たり前の心理です。
しかし、自分が相手に不安を感じるように、相手も自分に対して不安を感じているのです。それゆえ、お互い探り探りの付き合いになり、腹を割って話すことができず、お見合いのようなカタチになり、相互協力や助け合いも進みません。
これが、ともに働くチームメンバー内で起きてしまうと、組織の生産性にも影響してきます。ここを最も手軽に解決できる手段が「お酒のチカラ」だったのです。
飲み会の場で「お酒のチカラ」を借りてざっくばらんに話し、お互いが自己開示して、相互を理解しあうと、「ラポールの形成」と呼ばれる状態になります。ラポールとは「橋をかける」という意味のフランス語ですが、まさに双方の心に橋がかかるのです。すると「この人は自分に不利益をもたらす存在ではない」と確信でき、お互いの警戒心が解かれ、本当の協力関係が生まれるのです。
「う~ん、でもお酒のチカラなしでラポールを形成することは難しいなあ」
人間関係づくりをお酒に頼りがちの職場では、そう考えてしまいがちです。ですが、実はそんなことはありません。