「自己肯定感が低い人」に見られる歪んだ恋愛行動

要は、同じような状況を回避していると、「この状況を克服できない」という思いが強まってしまうのです。それは、回避するたびに脳が不安や「やりたくない」気持ちがあることを認めてしまうからであり、また、回避していると「いつかは克服できるかも」と思えるような経験も積めないからです。

そのため、不安であっても回避せずに挑んでいくことも大切です。うまく挑んでいくことができたら、そのような自分をとても誇りに思うでしょう。そして、同じような状況に再び遭遇しても、その際の不安は以前よりもはるかに少なくなるはずです。

これらの特殊形として、「死んだふり」があります。自分の心のスイッチを切ることで、相手から逃げるのです。このプロセスは多くの場合、意図的ではなく反射的に起こり、自動的に進行していきます。

この防衛戦略を使う人は、人間関係で「もう無理」と感じると、心がオフラインになるのです。オフラインになっていることは相手にもはっきりと伝わります。解離傾向のある人は、自分の内面の世界と外の世界を区別することがなかなかできません。他者の感情のゆれと気分を、自分の心の中に思いっきり受け入れてしまい、それらの責任が自分にあると感じてしまうのです。心のアンテナがずっと受信状態のままなので、人づき合いが大きなストレスになります。

また、こうした人は自分の心が穴だらけで、心の中のことが他者に漏れ出てしまうのではないかと感じています。それゆえ自分の心を閉ざす「内面的な退却」で自分の身を守ろうとし、さらに外の世界でも退却しようとするのです。このような解離傾向がある人のモットーは、「1人でいるときが一番安全」。なぜなら、その人は子ども時代に「人間関係=ストレス」という経験をしたからです。

子どものころに、助けを必要とするか弱い母親(あるいは父親)と自分とを引き離して考えることができない状況だったか、あるいは両親を恐ろしいと思っていたのです。また、トラウマがある人もこの解離の状態になることがよくあります。

「自分はそのままでも大丈夫だ」と理解する

退却がとても有意義な防衛戦略であるとしても、こういう人はときどき「まぼろし」からも逃げてしまっています。まぼろしであって実態がないのですから、身を隠す必要はまったくないのです。そこで、まずは「自分はそのままでも大丈夫だ」ということを繰り返しはっきりと伝えていきましょう。

そして、「自己主張したり抵抗したりしてもいい」ということを自分に理解させるのも、とても大切です。自分の権利や願望、欲求をもっと主張できるようになったら、人と接しているときに、もっとのびのびとして、自信を持てるようになるでしょう。

親の望みに従うよう厳しく育てられている子どもは、適切な方法で自己主張することができなくなっていきます。その代わりに、親の気分と願望に素早く反応できるよう、自分のアンテナを伸ばしておくことを覚えていきます。子どもにとって、親の規準を高圧的に押しつけられるのは当然つらいことですが、それよりももっとつらいのは、親の願望通りにふるまわないと親から「あなたにはがっかりした」というメッセージが送られてくることです。

とくに、母親が自分の期待に応えない子どもに対して悲しみで反応する場合、その子どもは"母親と自分との間に境界線を引くチャンス"をつかむことができません。子どもは悲しむ母親に同情し、すぐに「ママが悲しんでいるのは私のせいだ。私がなんとかしなければいけない」と感じてしまうのです。それゆえこのような子どもは、母親が幸せで満足していられるように、母親が望むことを"自ら進んで"行います。

一方、母親が自分の期待に応えない子どもに対して「怒り」で反応する場合、その子どもは"立ち止まるチャンス"を持てます。子どもは心の中で「くそばばあ!」と言って、心の中だけでも母親と一線を画することができるのです。