会社によって、あるいは業種によって、従業員に占める女性の比率はもちろんさまざまですが、全体でみると(特に役職者においては)まだまだ男性優位な職場が大半です。女性が働き、活躍する余地は、大きく残されているといえるでしょう。
ただ、私自身は、男性中心の組織のなかで、単なる「頭数」としてのみで女性を捉えているような会社は、うまくいかないと考えています。とはいえ、残念ながら、こうした会社もまた多いのが現実です。
そもそもなぜ、これまで職場に女性が少なかったのか?
とくに「効率化こそが正義」だと考えて、そこに邁進してきた男性中心の会社では、多くの女性たちは、すでにできあがっている効率化の型にははまらない「非効率な人たち」とみなされていたからではないかと考えられます。
これまでもそうですが、とくにこれからは、この考え方はまったく的外れと言わざるを得ません。
売れ筋がどんどん変わっていくなかで、効率化だけでは、もはや儲けが出ない。そんな時代には、情報をつむいで、お客さまが価値を感じるような企画をつくり上げ、自社の商品・サービスを「高く売る」ことによって生産性を上げていくしかありません。
そのためには、むしろ「異質な視点によって、新しいものを見つける可能性を高める」ことが重要です。単に男性中心の組織に合わせる形で、「頭数」として女性が入っても、職場は変わらないし、新しい商品は生まれないのです。
たとえば、何かモノを運ぶ仕事でも、その職場に女性が入ることで、「さすがにこれは持てませんよ……」という話が出てきたりする。「なるほど。じゃ、この部分については機械を入れよう、ロボットを入れよう」となれば、結果的にお年寄りも働ける職場になる。よい意味で、今までとまったく違った方向に話が進む可能性が出てきます。
もちろん化粧品の会社など、業種によっては逆に女性がほとんどという会社もあります。それはそれで、男性を入れたほうがよいのですが、現状でまだ男性中心の会社が大半であるなかでは、特異な存在にはなれるかもしれません。
今、商品企画を考えるなかで、女性や高齢者など、これまでは組織の主流ではなかった「異質な人」「価値観の違う人」の視点や考え方がとくに大切なのは、レッドオーシャンから抜け出して儲けるために、それらが必要だからです。同質的な人といくらディスカッションをしても、今の時代は何も生まれません。
むしろ価値観が違う人から「えっ……それ、どういうことですか?」と質問されることで、「なるほど、こう言っても伝わらないのか」「ちょっと独りよがりな考えになってるかな」と気付くことができるのです。
二輪車や水上オートバイ、船外機などのメーカーとして知られるヤマハ発動機(以下、ヤマハ)が、世界初の電動アシスト自転車を市販したのは、1993年のこと。当初は主に足腰の弱いシニア世代に向けて開発されたものでした。