では、実際の商品企画においては、社内および社外を含めて、具体的にどんな情報、どんな意見を手に入れればいいのでしょうか? これは言い換えると「商品企画において、どんな情報が『質の高い情報』なのか」ということでもあります。
下の表は、「アンゾフの成長マトリクス」として知られる図の考え方をベースに、商品企画にどんな情報が必要かを考えたものです。
図の左下の「既存商品を既存顧客に売る」という場合、基本的にはレッドオーシャンで商売することになる。当然ながらライバルが数多くいて、少しでも価格を抑えなければいけないため、効率化が最優先です。ここにいる限りは「高く売る」ことは望むべくもありません。こんなフィールドからは、少しでも早く足を洗う必要があります。
とはいえ、新しい商品を、これまで接点のなかった新しいお客さまに一足飛びに売る(①→④)というのはやはりハードルが高い。このマトリクスでいえば、まずは「真上」に行くか「真横」に行くかで考えるべきでしょう。
新しい商品を従来の顧客に売るという場合(①→②)、より売れる商品をつくるためには、自社の既存商品をなぜ買わなかったのか、なぜ他社の商品を選んだのかという、自社にとっての「売れなかった情報」に価値があります。
一方、新しい商品を開発するのが大変だからということで、従来の商品を新しい顧客に売りたい場合もあるでしょう(①→③)。これはつまり新しい市場を見つけることですが、そのためには、その商品をなぜ買ったのかという「売れた情報」が役に立ちます。より詳しくいえば、「想定外の顧客が、想定外の使い方をしている情報」に価値がある。
先ほどの電動アシスト自転車の例でいえば、もともとシニア向けに開発した商品だったのに、保育園の送迎に使うママたちがいたという情報です。
普通に買い物に行くためだけの自転車なら、1万円か2万円も出せば買えるのですが、とくに小柄な方・非力な方にとっては、子どもの送り迎えは普通の自転車だとペダルが重くて大変です。また、大切なわが子を乗せるのですから、安全面も気になる。
多くの人がこうした価値観を持っているからこそ、電動アシスト自転車は十数万円でも売れるのです。もちろん普通の自転車とは原価も違いますが、これは「価値観の差」で儲けることといえるでしょう。