「繊細さん」も心がスーッと軽くなる僧侶の思考法

「繊細さん」(HSP=Highly Sensitive Person)とは、生まれつき敏感な人のこと。ほかの人が気づかない細かいことに気がつき、深く考える性質を持っています(写真:Graphs/PIXTA)
私たちはつい、人の目を気にしすぎたり、自分よりも他人を優先してストレスを感じたり、無理を重ねて疲労困憊してしまう。では、どうすればより自分らしく、肩の力を抜いて生きられるのだろうか?
4000万人ものSNSフォロワーを誇る作家、ポッドキャスターのジェイ・シェティは、僧侶となるべく修行を重ねた経験をもとに、自分らしく生きるためのメソッドを紹介し、世界中から熱狂的な支持を得ている。
世界30カ国以上で刊行され、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー1位ともなり、8月に日本語版が刊行されたシェティの著書、『モンク思考』。
今回、『「繊細さん」の本』の著者で、HSP専門カウンセラーの武田友紀氏に話を聞いた。

繊細さは生まれつきの気質

HSPとは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した心理学上の概念で、生まれつきとても敏感な人のことです。ほかの人が気づかない細かいことにもよく気づき、深く考える性質を持っています。私はHSPを親しみを込めて「繊細さん」と呼んでいます。

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繊細さんたちの性質は、これまで「神経質」「考えすぎ」などと言われ、「治すべきもの」と認識されてきました。しかし、アーロン博士の調査により、繊細さは性格上の問題ではなく、生まれつきの気質であり、脳の神経システムに違いがあることがわかってきたのです。

アーロン博士によると、性別や国籍に関係なく、5人に1人は「繊細さん」だそうです。近年は、職場で悩みを抱えて、ネットなどで調べ、自分はこれに当てはまるのではないかと気づいて相談にいらっしゃる方が増えています。

しかし、繊細な気質と生きづらさはイコールではありません。繊細さんでも元気に働いている方がたくさんいますし、困っていなければ、自分が繊細さんだと気づく必要もないと思います。ただ、労働環境が悪くなり、非正規雇用が増えるなど、自分が生き残れるかどうかわからないという社会環境で、繊細さんか非・繊細さんかを問わず、悩む人も増えているように思います。

安価なものを大量に提供するという社会の流れのなかで、職場には余裕がありません。スピードも速くなり、マルチタスクが増えました。

コロナ禍でテレワークが広がり、残業が減る、休まざるをえない状況になるなど、社会のスピードが落ちました。すると、緊急事態宣言が明けてから「元のスピードに戻れない」という話を聞く機会が増えたのです。

つまり、もともとが速すぎて、みなさん無理をしていたわけですね。多くの方が、このことに気がつきはじめたように思います。

一方、家にこもってニュースやSNSをみる時間が増えたこともあり、不安も高まりやすくなっています。もともと不安とは、先のことを考えている状態です。過去をもとに未来をシミュレーションし、「こうなったらどうしよう」と悩むんですね。これはすべて頭が考えることです。「心が落ち着かない」という表現がありますが、本当に落ち着いていないのは、心ではなく頭です。ひっきりなしに考え続けている状態なのです。

「脳」を休ませるために今すぐできること

現代は、ネットニュースにSNS 、メールなど、多くの情報にさらされており、脳にはその情報を消化する時間が必要です。繊細さんの場合、深く考えるという性質がありますから、つねに大量の情報を処理しています。ひっきりなしに情報を取り入れていると、交感神経が活性化し続けます。ずっと考え事をしている状態になり、眠ってもうまく休めない状態になってしまいます。