今年の8月と9月は暑さよりも長雨に悩まされた日が多く、先が読みにくい気候が続く。天気や気温に左右される仕事に携わる関係者のご苦労は多いだろう。
一方、コロナ禍での巣ごもりが1年半以上となり、消費者の購買意識も変化した。
「ファッション関連や美容商品を買うことが減り、その分、デリバリーの飲食と通販の『銘品お取り寄せ』にお金を使うようになりました」(30代の女性会社員)
先日もこうした声を耳にした。多くの社会人が在宅勤務中心となり、外出関連の商品が影響を受けるのは、各メディアで報道されているとおりだ。
今回はその中で「清涼飲料」の状況を紹介したい。最近はペットボトル形態が主流だが、通勤や出張・旅行などが減る中で、どうなっているのか。人気ブランドの横顔を前後編の2回に分けて紹介し、長引くコロナ禍の消費者心理を考えてみた。
上位ブランドは、多くの人が飲んだ経験があるような商品が多い。業界の専門メディア「飲料総研」の最新売り上げランキングを紹介したい。
各ブランドを味別に分けると、①「水」(サントリー天然水、森の水だより&いろはす、ウィルキンソン)、②「コーヒー」(ジョージア、BOSS、WONDA)、③「茶系」(お~いお茶、綾鷹、伊右衛門、午後の紅茶、健康ミネラルむぎ茶)が目立つ。BOSSからは茶系商品も出ており厳密な区分ではないが、主力商品の味と傾向としてご認識いただきたい。
これ以外に「炭酸」(コカ・コーラ、三ツ矢)もあり、炭酸水のウィルキンソンはこの区分にも入るが、炭酸は近日公開の後編でくわしく紹介したい。
ちなみに市場全体では、2020年は新型コロナウイルスの影響で、対前年比93.4%の「17億7700万ケース」と落ち込んだ。
大人も子どもも在宅時間が増え、家庭の水道水からつくる茶葉・粉末飲料との胃袋争奪戦、最需要期の2020年7月に2年続いた冷夏、外出自粛に伴う自販機の需要減、営業自粛等で飲食店の(市販品の)購買控えなど複合要因といわれる。その中でも上位ブランドは手堅い。
最新調査で首位は「サントリー天然水」(サントリー食品インターナショナル)だ。
「水」への支持に加えて、レモンなどのフレーバー、スパークリングなど微妙に味が違う派生商品も上乗せ。長年首位だった「ジョージア」に代わり、2018年からトップに立つ。
発売された1991年は「南アルプスの天然水」という商品名だったが、その後に改称。ブランド伸長に伴い採水地も阿蘇(熊本県)や奥大山(鳥取県)に広がり、2021年春から北アルプス(長野県)も加わった。
「メーカー視点では『水としてのおいしさ』や『安全・安心な水』という機能的価値と、『天然水』という言葉が持つ情緒的価値を高めてきた結果だと思います。商品ラインナップも炭酸水や果実系を投入し、多様な嗜好に応えるようにしています」
サントリー食品の平岡雅文さん(ジャパン事業本部 ブランド開発事業部課長)はこう話す。消費者の声も「おいしい水」「手軽に飲める」が多く、調理用としても使われる。
そうした安全・安心を培ったのは地道な活動だ。
製造する工場の立地も「水源」にこだわり、災害に備えた消費者の備蓄意識に対応するため、各地に工場を分散させて有事の際は融通をきかせる。自社グループで汲み上げる地下水量の2倍以上の水を「涵養」(地表の水を地下に浸透させる)という取り組みも行う。
テレビCMで流れる山や清流のイメージは、品質活動あってのものだ。かつて「水はタダ」という意識も高かったが、味へのこだわりと健康志向の消費者意識も追い風にした。