売れ筋飲料「水・コーヒー・茶系」が上位独占する訳

「サントリー天然水」の商品ラインナップ(写真:サントリー食品インターナショナル)

コーヒー飲料で最も強い「ジョージア」(日本コカ・コーラ。1975年発売)――。代表する商品が、缶コーヒーの「ジョージア エメラルドマウンテンブレンド」だ。“ジョージア=エメマン”とも言われた象徴で、当時すでに缶コーヒー首位だった同社の業績を、1994年発売の同商品がさらに上乗せした。2019年には発売25周年を記念して「ジョージア エメラルドマウンテンブレンド プレミアム」も投入している。

特に現場作業員や運転手など現業職の人の支持が高く、かつては砂糖・ミルク入りタイプが人気だった。今も支持は高いが、コーヒーに対する一般的な嗜好は大きく変わった。

「ジョージア」は、自販機以外の商品も強化

上位各社の懸念材料は、自動販売機市場の低迷だ。缶コーヒーの過半数を売り上げる自販機の設置台数も近年は減少傾向にある。そこでボトル缶やペットボトル形態にも注力する。

「コーヒー飲料も2018年からペットボトルが主流となりました」(日本コカ・コーラ)

その代表例が、ペット飲料の「ジョージア ジャパンクラフトマン」(同年発売)だ。水出し抽出で、すっきりと軽やかな飲み口を実現させた。自販機以外も積極的に取り込む戦略を行う。

もうひとつ興味深いのは、小型ペットボトルへの参入だ。

2021年7月5日に全国発売されたのが「ジョージア ショット&ブレイク」(195ミリリットル)。缶コーヒーのユーザーも意識しつつ、ちょい飲みにも対応した。「これがショートブレイクの、新しいカタチ。」という広告表現が、同商品の目指す道を象徴する。

缶コーヒー「ジョージア エメラルドマウンテンブレンド」と小型ペットボトル「ジョージア ショット&ブレイク」(写真:日本コカ・コーラ)

“ごくごく飲める”を掲げて躍進した「BOSS」

「BOSS」(サントリー食品)は近年最も伸びたブランドだ。発売は1992年。2005年は6000万ケース弱だったが、2020年は約1億0270万ケース。過去15年間で1.7倍以上に拡大した。ここ数年は「ジョージア」を猛追。2019年は一時上回ったほどだ。

最近は茶系飲料も出すが、もともとコーヒー飲料として開発。ブランドの躍進を支えるのが2017年から販売する「クラフトボス」(CRAFT BOSS)だ。

「2019年、2020年と年間3000万ケースを突破。発売以来の累計販売本数は21年5月末で28億本を超えました。BOSSブランドが大きく成長した原動力は、まぎれもなくクラフトボスです」

大塚匠さん(ジャパン事業本部 ブランド開発事業部課長)はこう話す。

発売以来、「BOSS」はブランドコンセプトに“働く人の相棒”を掲げてきたが、クラフトボスは“現代の働く人を快適にする新しい相棒”だという。「コーヒーの香りがありながらすっきりした味わいで、世代や職種を超えてご愛飲いただいています」(同)。

缶コーヒーのBOSSに対して、クラフトボスはペットボトル。容器の形状も特徴的だ。深煎りした5種類の豆をそれぞれ粗挽きし、抽出したコーヒーをブレンドする独特の製法をとった。一般的なコーヒー飲料よりも薄味だが、この味を支持する消費者は多い。

濃いコーヒー、薄いコーヒーを使い分ける消費者

2021年には発売5年目にしてリニューアル。見た目も味わいも変わり、ライト感が増した。この味を好み、濃い味と飲み分ける消費者も多い。クラフトボスを愛飲する知人男性(30代会社員)は「薄い味のコーヒーは朝に飲みやすく、職場のコーヒーマシンでは濃厚な味を楽しむ」と話していた。サントリーが注目したのは、コーヒーに対するユーザー層の変化だった。