「昔と違い、IT系で働く人が増えました。例えばシステムエンジニアやプログラマーの方は、24時間、365日交代制の勤務です。多くはプロジェクトごとに働く会社が変わります。この人たちにインタビューしながら、 “新しい相棒”像をつくったのです」(大塚さん)
一方、BOSSが発売されたのは約30年前。「ジョージア」でも触れたが、缶コーヒーの愛飲者は現場作業員や運転手といった人たちがコアユーザー。その基本は現在も変わらない。
「今後も飲料の薄味ニーズは進むのか」も聞いてみた。
「コーヒー飲料は、手堅いニーズがあると思います。消費者調査では、コンビニのアイスコーヒーも、“ちびだら飲み”をして、氷が溶けた段階になって流し込む――という消費者の方もいたほどです。心地よく飲めるのも嗜好のひとつになっています」(大塚さん)
健康志向を反映して、無糖飲料を好む人も増えた。国内市場全体での「無糖飲料製品」構成比は「2018年は約49%」(全国清涼飲料連合会調べ)と、半数が無糖になった。
カテゴリー別では、2017年からコーヒーに代わって日本茶が首位となった(飲料総研の数字)。もう少し広げた「茶系飲料」で考えると、「実は、緑色の商品と茶色の商品がほぼ拮抗する市場」(サントリー食品)だという。
緑色はほとんどが緑茶で、茶色は紅茶、ウーロン茶、麦茶などが入る。これ以外にブレンド茶もあるが同カテゴリーはなく、「爽健美茶」(日本コカ・コーラ)と「十六茶」(アサヒ飲料)の商品群、だと聞いた。
茶系の緑色で、最強は「お~いお茶」(伊藤園)。緑茶市場を切り開いた先駆者だ。これを「綾鷹」(日本コカ・コーラ)や「伊右衛門」(サントリー食品)が追う構図となっている。
一方の茶色は「午後の紅茶」(キリンビバレッジ)が強く、「健康ミネラル麦茶」(伊藤園)が続く。かつて人気だったウーロン茶は低迷気味だ。茶系飲料の横顔は紙幅の関係もあり後編で詳しく紹介したい。
上位ブランドに共通するのは、まずは安心感だ。ふだん飲み慣れた商品以外に、新商品でも「このブランド(商品)なら外れがないだろう」という安心・安全志向がある。
「最近は新商品も、イメージが湧く味しか支持されない」という話は、食品業界ではよく聞く。100円台で買える商品でも「失敗したくない」消費者意識は強い。
もうひとつの共通点が、ホットでもアイスでも楽しめる通年性だ。春夏秋冬の四季がある日本では、寒くなれば温かいドリンクが好まれ、暑くなれば冷たいドリンクが好まれる。
「コーヒーと茶系飲料が強いのは、長年ホットでもアイスでも飲まれてきたから」とも言われる。水の場合は、冬は常温で飲む消費者も増えてきた。
先の見えないコロナ禍が長引き、消費者の息抜きも「身近な気分転換」が続く。後編では炭酸飲料と茶系飲料を中心に、さらに消費者心理に迫ってみたい。