下腹太りに悩む人は座りすぎの悪影響を知らない

では、なぜリンパは滞るのでしょうか。

まずお伝えしておきたいのが、リンパが全身をめぐるのに12~24時間もかかることです。血液は1分ほどで全身を1周するため、リンパはその1000倍もの時間をかけてめぐっているということになります。これほどの差がつく最大の理由は、心臓という強力なポンプに送り出された血液の圧力がリンパには届かないから。キッチンで食器を洗う水をシャワーにすると、極細の水の通り道が無数にあることで水圧は弱まりますが、リンパも同様に通り道1つひとつにかかる水圧が弱まるわけです。

このリンパが渋滞するしくみも、食器洗いを例にするとわかりやすいかもしれません。汚れた食器を洗うと細かいゴミや油汚れが排水口に流れますが、流す水がチョロチョロ程度のゆるやかさだと、ゴミや汚れは溜まりがちに。すると排水口に水が流れにくくなります。同様に体内でリンパが滞ると「汚水化」したドロドロのリンパが溜まっていくのです。リンパの汚水化が皮膚のすぐ下で起きると肌にも影響します。その代表例がくすみや肌荒れです。

ではリンパマッサージをすればいいのかというと話は単純ではありません(写真:Ushico/PIXTA)

リンパマッサージの限界とは

体内でリンパが滞ると「汚水化」する。想像するのも嫌な感じですが、その汚水化したリンパは、どうなるのでしょうか。

正解は、むくみです。むくみは、よほど重度でないかぎり軽視されがちですが、むくみを漢字で書くと「浮腫」。「腫」という字が示すように、リンパが皮下組織に流れ出て、腫れ上がったような状態です。顔や脚などかなり広い範囲が腫れ上がるわけですから、体にいいわけがありません。

そして、あまり知られていませんが、じつは下腹をぽっこり出させる主犯格がむくみなのです。むくみと言えば顔やふくらはぎのイメージが強いと思います。しかし、いちばんむくむのは、上半身と下半身から流れつく汚水化リンパを一手に引き受ける下腹です。次にむくみやすいのがお尻で、悩ましいたるみの半分はむくみでできています。

下腹やお尻がむくみやすいいちばんの理由は、臓器がすぐそばにあるからです。

臓器で、消化や解毒などをするときに汚水化したリンパが大量に発生し、それが鼠蹊部(脚の付け根)のリンパ節で詰まってあふれ、むくむのです。この汚水化したリンパでむくむのがぽっこり下腹の第1段階で、その上に脂肪がつくのが第2段階と考えてください。

まずぽっこり下腹の第1段階がどう起きるのかについて、ご説明しましょう。

むくむということは、まず血流やリンパの流れが妨げられた部位が生じています。なかでも下腹にむくみを呼ぶ最大の要因は、座る時間の長さです。

座るということは、股関節もひざ関節も折り曲げているということ。通常はまっすぐになっている部分が長時間曲がっていれば、血液の流れは悪くなりますし、それに伴いリンパの流れも悪くなります。しかも座っているときは太もも裏側が上半身の重みで潰されるため、下半身のめぐりの悪化に拍車をかけるのです。

下半身のリンパのめぐりが悪化すると鼠蹊部に汚れたリンパが滞っていき、そこが詰まることで、むくみを呼びます。めぐりが悪いことで冷えて栄養素や酸素が届かない部分が生じ、基礎代謝は低下。すると脳は「体の危機だ! 冷えた部分を温めないと」と判断し「保温機能のある脂肪をつけろ!」という指令を出します。こうして汚水リンパで下腹がむくむだけでなく、脂肪までついて本格的に厚みを増し始めるのです。

リンパ節の詰まりにマッサージは効きにくい

排水口の汚れは、勢いよく水を流せば落ちます。だとしたらリンパをガンガン流せば、滞った状態も解消できるはずです。この考え方はもっともで、健康な人なら運動や入浴で血流をアップさせるだけでもリンパの流れは改善します。しかし深部リンパが渋滞するクセがついた人は、リンパの通り道に詰まりがあるためうまく流れません。